CoC Wizonの元ネタ、クトゥルフＴＲＰＧの世界

「田所さん！ここを開けて、お願い！！」
 
いよいよクルーザーのデッキの上に激しく打ち付ける波しぶきに負けまいと大声で閉ざされた操舵室に向かって叫んだが、ハッチは一向に開く気配はない。
 
「うふふふふ、もう終わりだ。ここはもうひいてけの海の中だ。俺たちは助からない…」
 
操舵室から締め出された菅井が船縁のライフラインにもたれかかってそうつぶやいた。強風としぶきに煽られてより一層憔悴した顔は幽鬼のように見える。

*今回はクトゥルフＴＲＰＧの記事です。wizonのネタ元であると岩Pも明言されているクトゥルフの世界ですが、直接的にWOのことではありません。宇宙的恐怖に興味をお持ちの方だけお読みいただければ幸いです*

 

「そんな…いい加減なことを言わないで！！」
 
そう菅井に怒鳴り返したが、逆巻くように強くなった風は依然恐ろしく高い波をうねらせながら船体を叩き続けている。さっきまであんなに穏やかな海だったのに…急なしけになったのは確かにこの海域に入ってからのことだ。
             
「田所さん！とにかくここを開けなさい！」
 
蝶番のあるらしい場所を狙って思いっきり蹴ってみたが、最新型クルーザーのコックピットハッチはびくともしなかった。キックボクシングジムで鍛えた蹴りでも壊すことのできない頑丈なマホガニーの扉を睨みつける。扉にしつらえられた【T】という田所の名字を現す飾り文字が憎々しい。
 
「おい、これを」
 
倉本がどこからか折り畳み式の防火斧を持ってきた。海外の頑丈なつくりのクルーザーなので製造業者が備え付けていたのだろうか。とにかく、扉を壊してでも中で何かに取りつかれたように舵を取っている田所を止めなくてはならない。
 
「ナイス！いいモノ見つけてきたじゃない・・・」
 
赤い防さび用の塗装の施された手斧を倉本からうけとると、振りかぶって何度も扉に打ち付ける。木片が勢いよく舞い、ドアノブが周りのラッチごと脱落しはじめた。
 
「もうすこし・・・きゃ！？」
 
突如一段と高くなった大波に煽られて船体が急激に乱高下する。１０ｔのクルーザーがやすやすと波の上で弄ばれる中、みんな玉ころがし迷路のおもちゃのように傾けられたデッキの上を転倒する。
 
「なんなんだ・・・なにか・・・なにかが近づいてきてる！！」
 
倉本の絶叫が聞こえる。
 
波そのものがデッキに覆いかぶさり、意味をなさなくなった船縁の防波壁に必死にしがみつきながら、ゆきは波の間に浮かぶ光の列を目にした。
 
「おばけ・・・？おばけだ・・・」
 
幼い馨春がゆきにすがりつきながらそうおびえた声で呟いた。
 
その光の列は陰鬱に上下しながら、こうべを垂れた賢者の行列のように厳かに、しかし忌々しく連なりながら波の合間をうねり、近づいてくる
 
『ぃ・・・い・・・け・・・・』
 
そして、吹きすさぶ強風と波の音を無視して、ある唸りのような音が海上にこだまするのが聞こえてきた。
 
『けぇ・・・・・・ぃ・・・いて・・・・・けぇ・・・・』
 
その音はまるで太古から人間の本能に刷り込まれた絶対に押し開いては行けないおぞましい記憶を掻きだすかのように聞く者の胸に恐怖を揺り起こす。
 
「あれは、きっと銀河鉄道だ！！ぎんがの・・れっしゃだ！」
 
「おばけだ・・・ぼ、ぼくたちを迎えに来たんだ・・・」
 
次々にうなりながら近づいて来る光の列をみて、仲間たちが恐慌状態に陥っていく。だがゆきにはわかっていた。そう、一目見た瞬間から、彼女の感受性はそのものの正体を看破していたのだ。
 
「そんなわけ、そんなわけないじゃない・・・あれは」
 
あれは・・・かみだ。わたしたちがしらなかっただけのわたしたちがしりたくなかっただけのわたしたちのせかいのほんとうのかみさまだ。このちきゅうをつくった、このほしのかみのけんぞくだ。
 
「あはははははははは」
 
突如彼女の中で何かが弾け飛んだ。今まで生きてきた何もかもが莫迦らしくなった。
 
ちやほやされて、男に抱かれて、店で、街でＮｏ.１になって、大金を稼いで・・・だからなんだ！？それがどうした！？人生を支えてきた価値が一瞬で崩壊した。何が男だ、何が女だ。何が金だ、何が人生だ。人間は不条理という名の砂の楼閣の上で踊る哀れな道化に過ぎない。あれをみろ！あれこそが、この宇宙で唯一の価値ある存在だ。私たちは大洋に浮かぶ波しぶきひとつにも値しない。
 
「ぎんがてつど・・・」
 
ゆきの目に、すぐそばでブツブツと独り言をつぶやく髪の長い少年が映った。彼は理解していないのだ、自分の人生で出会った卑近な俗例でしか今の目の前の物事を租借できないのだ。かわいそうなやつ、いやかわいそうな男。
 
「こんなやつ・・・男なんて、莫迦ばっか」
 
『ぃ・・・いてけぇええぇぇぇ・・・ぃいいいいいぃてけえぇぇぇぇえ』
 
いまや海全体が、愚かな人類には到底理解することのできない意味のあるうなり声を発している。宇宙の智慧を内包し、波の音すら掻き消してびりびりと大気を振るわせるその声に、安堵感すら抱きつつある
 
船体が大きな音を立ててきしんだ。さっきまであれほど揺れていたクルーザーは不思議ともはや寸分も揺れてはいない。ゆきにはわかっていた。捕まったのだ。
 
ゆきは手に持っていた斧を振り上げた。
 
少年は眼前いっぱいにひろがりつつある光の列を凝視していまだ何事かを呟いている。
 
恐ろしい轟音とともに船体が本格的に圧縮され、ひしゃげつぶされようとしていた。
 
「莫迦、ばっか・・・」
 
真っ赤に染まった激しい光があたりを包み、ゆきは少年に向かって手斧を振り下ろした。



























ヴぁー！

今回はTRPGというコミュニケーションゲームをオンラインで遊んでみました。

今回遊んだTRPG・・・「クトゥルフの呼び声TRPG」のゲームセッション（TRPGではプレイのことをセッションと呼びます。）はあながちWizonに無関係なものではありません。

WOのプロデューサーが「WOのシナリオの題材はクトゥルフ神話である」と明言しているからです。

それで、そのクトゥルフTRPGというのはどういうものかと申しますと、上記のリプレイ風小説（TRPGのプレイの内容を小説仕立てにしたもの）みたいなホラーストーリーをRPして遊ぶゲームなわけです。

わかりづらい？

わかりづらいですよね。要はそのまんまの意味のロールプレイングゲームなのですが

コンピューターゲーム全盛期の今の時代、TRPG自体がもはや廃れきってしまったゲーム体系だといわざるを得ないわけですから、知らない人に説明するのはすごく難しいです。

コンピューターRPGがPCでアプリをぐりぐり動かすインターフェースだとしたら、TRPGはすべてをコマンドモードで入力するインターフェースのゲームのようなもので、舞台設定、進行、演出、セリフ、ルール、処理など全部人間の脳みそでやるわけなので一見難しく見えます。

でも難しくないのよー。やってみるととても楽しい想像力ゲームで、オンゲーファンの皆さん、特にRPG好きな人はハマること請け合いです。

プレイ中の雰囲気はワイワイやってTRでだべるときみたいな感じで

くだらないこといいながらｇｄｇｄすすめていってます。お茶やお菓子食べながら遊んでもいいですね。オンラインですが・・・

っとまあ、グループSNEの回し者みたいなことを言うのはやめて、今回のTRPGの解説をいたします。

クトゥルフTRPGはホラーテイストのシナリオが遊べるルールです。

今回のお話も海洋ホラーアドベンチャーになっています。私が使ったのは既成のシナリオですが、ゲームマスター（ゲームキーパー）は私が行っております。

理不尽な恐怖映画に放り込まれたようなシチュエーションをプレイするわけです。

さて、それではそのクトゥルフホラーの世界に旅立った勇気ある探索者（クトゥルフでのプレイヤーのこと）をご紹介いたしましょう。


































プレイヤー①
・名前　ゆき/ゆきぽー
・呼称　ねーさん
・性別　♀
・職業　売女（フッカー）
・経歴　なんやかんやあって自暴自棄になって売女になる。売上はTOP１　話術がべらぼうにうまい（本人談）

上記のリプレイ小説の主人公になってもらいました。実際プレイ中は異界の恐怖を体験して小説と同じように（軽く）発狂していただきました。名前からわかるように8chwizon勢にはおなじみのゆきぽーさんです。売女・・・って・・・・（ごほん）普通に考えたら反社会的な職業ですがTRPGの世界ならありです。そういう職業をプレイできるのもTRPGの魅力だと思いますね。枕事と格闘（！）にすぐれ、その卓越した行動力と交渉術でチームを引っ張ることができます。探索者としても優秀なスキル配分ですね！頑張れゆきぽー！

































プレイヤー②　
名前　チョビ・ランペルージ（自称、本名は誰も知らない）　　
呼称　チョビ
性別　♂
年齢　15歳
職業　ニート（ディレッタント）
経歴　自分は魔法剣士だと信じて疑わない引きこもりでニート。妄想乙。

あの…なんつうか、すごい設定のキャラクターでした。ニート・・・って言い方がいかにも現代っぽいですが、これをクトゥルフRPG的に解釈いたしますと好事家（ディレッタント）に該当するのではないでしょうか。時間も暇もいっぱいあって、組織のしがらみにも縛られない自主探偵です。興味だけでいろんなところに首をつっこめるのもRP的に扱いやすいですね。ニート、なかなかいいんではないでしょうか。積極的に引きこもりRPにまい進するチョビですが、ダイスの目はかなりいいし中の人のロールプレイスキルが高いので期待してるぞ！CHOBI！！でもいきなり頭割られたり、運は悪い子です。ちなみにチームで一番のイケメンです。やっぱひきこもりって肌がきれ・・・むぐぐぐｇ。



































プレイヤー③
・名前　響馨春（きょうけいしゅん）
・呼称　きょーちゃん
・性別　♂
・年齢　９歳
・職業　小学生
・経歴　中国とのハーフ。写真や考古学に興味のある小学生。好きなものは猿意外の毛の生えた動物。医学も拾得済み。

しょ・・小学生・・・実はクトゥルフTRPGにはルール上の年齢縛りがあるのですが、今回中の人が初プレイとのことでめんどくさいリアル系ルールは意図的に無視しました。その結果誕生してしまったスーパー小学生。あらゆる学問に通じ、医学、精神分析学、心理学に長け、必殺の「おねーちゃん、ぎゅー」でどんな狂気に陥った探索者も救い出してしまうという、バーローより有能なアルティメイト９歳児。９歳ははスカート捲りでもしてろ！とにかくほんとにどの場面でも役に立つ（プレイ的に）キャラです。精神も健全。でも年上好きの変態なのはばれてます。






























プレイヤー④　
・名前　倉本雄二
・呼称　倉本
・性別　♂
・年齢　２２
・職業　会社員、オタク
・経歴　北海道大学院まで勉強するもその容姿から良い会社には入れず普通の会社で普通のサラリーマンそんな私を癒してくれるのは魔法少女ナナイ。唯一の心の支え。これのグッズ集めに没頭しています。仕事はPCパーツなどの発注や時々周修理

いやもう何ツーんですかね。イラストからして異形のものどもが裸足で逃げ出しそう。という異色キャラ倉本。しかし待ってください。経歴を見ていただいたらわかると思うんですが、このキャラが一番探索者としてのディティールが優れているのです。じつは今回のセッションはこのキャラのプレイヤーさんの希望で私が用意したもので、言いだしっぺだけあってかなり気合入ったキャラクタービルドをしていただきました。RPもいい感じでオタク全開でやってもらっています。拙者ｗｗｗｺﾎﾟｫｗｗｗｗな感じです。上のリプレイ小説ではさすがにそれは端折りましたが・・・中の人のプレイがかなりTRPGをわかっている感じなので、チームをうまい具合に導いてくれそうです。ここぞというときのサイコロの目はいいタイプだったとは私も驚きました。あ、顔がへちゃむくれなのはAPPという外見の美しさを表すステが４（最大１８）だからです。ｷﾓｵﾀﾋｬｯﾎｳｰ！！


改めて並べてみると、恐ろしいほどアンバランスな四人の探索者でしたね・・・・

わたしこの人たちと一緒にこれから冒険していけるか不安。

まだ序盤ですがプレイが貯まりましたら、またリプレイという形でちゃんとはじめから読めるものに仕上げるつもりです。

長文にお付き合いくださってありがとうございました。

では・・・さらばです・・・・

くとぅるるるるるるるる・・・・


*各キャラクターの一枚絵は、見学に来てくださった某WOプレイヤーさんが描いてくださりました！うっひょおおｗｗ多謝*