このブログは、wizon wizardryonline (ウィザードリィオンライン)のプレイ風景をつづったものです
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小説を書いてみたぜ!
某ゆきぽさんのブログでも連載小説をやって遊んでいらっしゃるようなので、ダミも調子に乗って小説を書いてみることにしました。
んで、書きました(笑)
書いてみたけど・・・創作活動って難しいですね~・・・
世の中の作家さん、小説家さん、尊敬します。
次回【盗賊】はこちら
某ゆきぽさんのブログでも連載小説をやって遊んでいらっしゃるようなので、ダミも調子に乗って小説を書いてみることにしました。
んで、書きました(笑)
書いてみたけど・・・創作活動って難しいですね~・・・
世の中の作家さん、小説家さん、尊敬します。
次回【盗賊】はこちら
#1.盗賊①
「ふっざけんな!!クソッ…やっぱりあの地図屋でたらめじゃないか!」
ドワーフのアルフレッドはそう叫んで、金属製の小手をつけたまま器用に持っていた羊紙皮を引き破るとダンジョンの側溝に投げ捨てた。べしゃりとスクロールが溝水に跳ねる音がして居合わせたドブネズミらしい小動物が鳴きながら逃げ出す気配がした。短躯ながら発達した筋肉をもつドワーフの戦士は鎧の下で太い腕をわなわなとふるわせ、綺麗に編み込まれた長い髭の先まで怒りで逆立たせている。
「荒れないでよ、アル。露店の地図売りなんてそんなものでしょ?」
地団太を踏むドワーフの戦友をため息交じりにたしなめたのはポークルのサラだった。測量をする手をとめもせずに、斜め前方を行くアルフレッドの背中に向けてそう諭す。
「でもよお、あいつこぉ~んなでたらめ地図3枚セットに15,000Gも出させたんだぜ?ボルタックの親父だってそこまであくどい商売はしねえよ!!畜生・・・これだからポークルの盗賊は信用ならねえんだ。」
「アル・・・私だってポークルの盗賊なのよ?言葉には気を付けてもらいたいわね。」
聞き捨てならないとばかりに、サラが抗議の声をあげた。地図作成用の測量スコープから顔をあげて、立ち止まる。細かく装飾された金属片をつなぎ合わせた小金属片鎧の裾を揺らし、さも立腹したように腰に手を当ててアルフレッドを睨みつけた。
その立ち姿はどう見ても6~8歳の幼女のようだ。サラの背丈など一般的には背の低い種族とされるドワーフの三分の二ほどもない。しかし彼女の立ち居振る舞いは子供のそれではない。
彼女らはポークルと呼ばれる種族で、その外見上子供か幼児にしか見えないが、それは種本来の特質だった。ポークルの中には生来の俊敏さを生かして盗賊稼業につくものが多い。よってサラはこの見た目でも立派な成人の女性で、しかもベテランの盗賊だった。
「んー・・まあ、いかにもインチキっていう感じの地図売りでしたしねえ・・・」
前衛の二人の会話を聞きながら間延びした感想を漏らしたのは、最後尾にいた魔術師兼僧侶のパックだ。三人の中では最も背が高い。栗色の髪の若者で、魔術師らしい長大なローブの裾がダンジョンの床で汚れないようにつとつまんで歩く姿は、いかにも神経質なのだが、性格は口調のとおり、のんびりした青年だった。
「まあ、あれですよ。あの地図売りのポークル、薄呆けたアサシンマスクで顔を隠していたし、アル氏の言うように盗賊っぽかったですねえ・・・うんうん。はじめっからインチキ地図売りだろうと思ってましたよ。僕は。」
あっはっは、と呑気に笑うパックを見て、サラは殊更に顔をしかめた。
―じゃあなんで買うのを止めなかったのよ。
と言いそうになったところで、サラは口をつぐんで再び測量を開始した。彼女たち三人には選択肢がなかったのだ。彼女たちが今いるこの迷宮、ディメント王国の公式地図にすら載っていない裏ダンジョンの地図を、三人はかれこれ2カ月も露店広場で探し求めていた。ようやく件のダンジョンの地図を売ってやるという怪しい地図売りの言葉に飛びついて言い値のまま買ってしまったとしても、誰が彼らを責められるだろうか。
そもそも――ここは公式地図に乗っていないダンジョンなのだから、探索も情報収集も違法、かつ自己責任なのだ。ディメント王国が公式に認めていないダンジョンの探索を冒険者に禁止する理由は二つあった。一つは危険が伴うから。
公式のダンジョンには必ず確認されている「復活の像」と呼ばれる救済装置がないのだ。これは魂が消失しなければ事実上老衰や病気以外では不死である「守護者の血を引く者」と呼ばれる冒険者にとって大変危険を伴うことだった。二つ目は冒険者の手に渡したくないなにかが眠っているから。欲深な冒険者に渡したくない程高価な宝か、粗暴な冒険者の手に余る危険なものか、いずれにしろ「ダンジョンで見つけたものは冒険者のもの」という不文律を持つ冒険者たちに渡してはならない何かがある場合だった。
冒険者はダンジョンで見つけたあらゆる宝を「落し物」と呼び、本来なら納めなければならない「迷宮内取得物税」をびた一文も国王に納めない者が大半だった。しかし、通常ダンジョン探索というものはある程度王国側と冒険者側の利害関係の上に成り立っていて、その程度のダンジョン荒らしは黙認されていたし、むしろ冒険者の絶対数を増やすために王国が推奨する風潮すらあった。サラも冒険者を始めてから過去何度も危険なダンジョンへの探索を言葉巧みに推奨する公布を見たことがあった。
―まあ、そうやって冒険者ギルドのいうような「うまい話」はほとんどないのだけど・・・
特定ダンジョン探索に伴う報酬の倍増であったり、希少品の発見報告だったり、お宝の発見数の増加見込み報告書(これが一番信用ならなかった)であったり・・・その時々で王国の出先機関である冒険者ギルドの持ちかける「うまい話」は様々だったが、たいていの場合数か月にわたる壮大な骨折り損に終わることが多く、そういった話につられて指定のダンジョンに潜った冒険者の中には、しばしば危険な罠や獰猛なモンスターとの戦いで消失して帰れなくなる冒険者も多かった。
つまり公式のダンジョン探索というのは「労多くして益少ない」労働である代わりに、管理され、ある程度の安全も保障された仕事だったのだ。
しかし、非公式の…公式地図に乗っていないダンジョンというのは、入潜許可証もない代わりに安全を保障するものも何もなく、だが未踏破なだけにどんなお宝がどれほど眠っているか知れない、いわば本当の冒険なのだ。冒険者、というだけで十分裏稼業に分類されるべき職種だが、冒険稼業が半ば政府によって管理されているディメント王国にあって、未踏破非公式のダンジョン潜入こそが「真の裏稼業」だった。
サラたちがこのダンジョン―「絆の試練場」とささやかれてる裏ダンジョンの話を聞いたのは半年前だ。最深部には未だ手つかずの宝が眠るとも、途方もないマジックアイテムが眠るとも言われ、もう何組もの「裏」冒険者達が挑戦し敗れているということだった。“幸運な”ジャバに“叩き屋”ミリー、ダミアヌスとコスマスの“双子”ほかにも巷で有名な冒険者たちが我先にとこのダンジョンの情報を追い求め・・・大半が場所すらつかめずに探索を打ち切っていた。
裏ダンジョンにまつわる情報を集めることも場合によって違法であるため、サラたちは慎重に酒場や市場での噂に耳を傾け、冒険者ギルドの目をかいくぐりながら、数か月かけて裏ダンジョン専門の悪名高いユニオンをいくつも訪ね、ここの所在地を割り出したのだ。
それですら正確な位置はわからないおぼろげな情報ばかりだった。三人は大枚を払いながらガセネタをいくつも拾い集めその中から場所を特定した。
なので、サラたちがダンジョンそのものを見つけられたのは、もはや僥倖というしかなく、インチキだろうがぼったくりだろうがそのダンジョンの地図といわれるものが手に入ったのも幸運だと思うしかなかった。
「もう、とりあえず私が再測量してるんだからいいじゃない。それに大まかにはあってたわよ、さっきの地図・・・・・ここに来るまでの道筋と、あとは入口のフロアの石段の形だけだったけど。」
「あのなあ、サラ。俺が言ってんのは値段の話だ!そもそもなっ・・・」
「・・・」
「・・・」
アルフレッドが大げさに腕を振り回してさらに文句を叫ぼうとして、言葉尻を切った。それが合図だったかのように、残りの二人も足を止め、静かに何かをうかがうように周囲の気配に耳を澄ませた。
「・・・姿隠しの気配だ。」
アルフレッドは静かにそうつぶやくと、肩にかけていた大斧を構えた。さっきまでの隊の砕けた雰囲気が嘘のように消え去り、戦士は殺気立った憤怒の表情で周囲を睨みつける。
3人はさっと散開するとアルフレッドを前面に押し出して戦闘陣形を組んだ。サラは使い慣れた手斧を引き抜いて構え、パックは低い声で魔術の詠唱に入った。姿隠しはその名の通り姿を消し去る冒険者の技だ。その気配がしたということは、何者か、それもモンスターではなくサラたちと同じ冒険者が近くに潜んでいるということ、さらにその何者かは少なくとも姿をあらわして友好な挨拶とお辞儀を交わすつもりはないということだった。
「ううぅぅぅおおおおおああぁぁぁぁぁあああ!」
突如獣じみた叫び声をあげると、アルフレッドの筋肉が急激に膨れ上がった。それは彼が臨戦態勢に入った証だ。猿叫で理性を弾き飛ばし、極限まで肉体の力を引き出す戦士の技である。並みの冒険者ならこのモンスターじみた剛腕から放たれる斧を受けて、ただではすまないだろう。
前方の闇の中にかすかに何かが動き回る気配がした。間違いなく何者かが姿隠しのまま近寄ってきているようだった。
―潜ってる時間が長いわ・・・本職の盗賊かもしれない、気を付けて―
サラはアルフレッドにささやいた。
姿隠しは本来は盗賊の技である。しかし冒険者の中には幾つもの職を渡り歩き、本来の威力と精度に及ばないながらも他種の技を駆使する者もいる。たとえばパックは魔法使いの呪文を使える僧侶であるし、サラも僧侶を経験し初歩の回復魔法を習得した盗賊だ。
―盗賊か!!
アルフレッドはにやりと口の端をゆがませると未だ姿を現さない相手に向かって大声で叫ぶ。
「姿を現しやがれ!!盗人め!!」
―盗賊だっつってんでしょ・・・このでぶちんっ
心中で舌打ちしながらサラがアルフレッドを睨みつけた瞬間、二人の後方で異変が起こった。
「ひゅ・・・ぐぶっ・・・」
最後尾で呪文を詠唱していたパックが、短い笛の音のような音に続いて濁音を発して喉を抑えてひざをついた。その喉元からはどくどくと鮮血があふれている、明らかに致命傷だ。気配に振り返ったサラは後方の闇の中に素早く走り去る小さな背中を見た。
「そんなっ・・・足音もなくすり抜けたっての!?パック!!」
襲撃者は姿隠しをしたまま無音で前衛の二人の脇を通り抜け、避けようのない一撃でパーティの火力兼回復役を奪ったのだ。恐ろしい手際だった。
「野郎!」
アルフレッドがはじかれた弾丸のようにすぐさま後を追った。
「まって!アル!」
サラの制止する声も聞かずにアルフレッドは襲撃者の消えた暗闇に突進していった。
「ッチ…だから嫌なのよ!突進戦士って!!」
サラは悪態をつくと、チラともう動かないパックを振り返った。血海の中に自らのローブを浸し、ひざを折るようにして倒れこんでいる魔術師はどう見ても死んでいるだろう。しかしパックとて守護者の血を引く冒険者である。ここは非公式のダンジョンである故、ダンジョンの中で復活はできないが、その遺体なり灰なりを持ち帰り、街で復活の儀式を執り行えば何事もなかったかのように生き返る。もちろんそのまま消失してしまうものもいるが、冒険には死が、そして死には消失がつきものであるということは冒険者なら覚悟ができていることなのだ。パックだけでなくサラやアルフレッドも今まで何度もそうやって死にながら消失を免れ、蘇ってきたのだ。
「ちょっとだけまっててね、パック」
そういうとサラはアルフレッドの後を追った。
「ふっざけんな!!クソッ…やっぱりあの地図屋でたらめじゃないか!」
ドワーフのアルフレッドはそう叫んで、金属製の小手をつけたまま器用に持っていた羊紙皮を引き破るとダンジョンの側溝に投げ捨てた。べしゃりとスクロールが溝水に跳ねる音がして居合わせたドブネズミらしい小動物が鳴きながら逃げ出す気配がした。短躯ながら発達した筋肉をもつドワーフの戦士は鎧の下で太い腕をわなわなとふるわせ、綺麗に編み込まれた長い髭の先まで怒りで逆立たせている。
「荒れないでよ、アル。露店の地図売りなんてそんなものでしょ?」
地団太を踏むドワーフの戦友をため息交じりにたしなめたのはポークルのサラだった。測量をする手をとめもせずに、斜め前方を行くアルフレッドの背中に向けてそう諭す。
「でもよお、あいつこぉ~んなでたらめ地図3枚セットに15,000Gも出させたんだぜ?ボルタックの親父だってそこまであくどい商売はしねえよ!!畜生・・・これだからポークルの盗賊は信用ならねえんだ。」
「アル・・・私だってポークルの盗賊なのよ?言葉には気を付けてもらいたいわね。」
聞き捨てならないとばかりに、サラが抗議の声をあげた。地図作成用の測量スコープから顔をあげて、立ち止まる。細かく装飾された金属片をつなぎ合わせた小金属片鎧の裾を揺らし、さも立腹したように腰に手を当ててアルフレッドを睨みつけた。
その立ち姿はどう見ても6~8歳の幼女のようだ。サラの背丈など一般的には背の低い種族とされるドワーフの三分の二ほどもない。しかし彼女の立ち居振る舞いは子供のそれではない。
彼女らはポークルと呼ばれる種族で、その外見上子供か幼児にしか見えないが、それは種本来の特質だった。ポークルの中には生来の俊敏さを生かして盗賊稼業につくものが多い。よってサラはこの見た目でも立派な成人の女性で、しかもベテランの盗賊だった。
「んー・・まあ、いかにもインチキっていう感じの地図売りでしたしねえ・・・」
前衛の二人の会話を聞きながら間延びした感想を漏らしたのは、最後尾にいた魔術師兼僧侶のパックだ。三人の中では最も背が高い。栗色の髪の若者で、魔術師らしい長大なローブの裾がダンジョンの床で汚れないようにつとつまんで歩く姿は、いかにも神経質なのだが、性格は口調のとおり、のんびりした青年だった。
「まあ、あれですよ。あの地図売りのポークル、薄呆けたアサシンマスクで顔を隠していたし、アル氏の言うように盗賊っぽかったですねえ・・・うんうん。はじめっからインチキ地図売りだろうと思ってましたよ。僕は。」
あっはっは、と呑気に笑うパックを見て、サラは殊更に顔をしかめた。
―じゃあなんで買うのを止めなかったのよ。
と言いそうになったところで、サラは口をつぐんで再び測量を開始した。彼女たち三人には選択肢がなかったのだ。彼女たちが今いるこの迷宮、ディメント王国の公式地図にすら載っていない裏ダンジョンの地図を、三人はかれこれ2カ月も露店広場で探し求めていた。ようやく件のダンジョンの地図を売ってやるという怪しい地図売りの言葉に飛びついて言い値のまま買ってしまったとしても、誰が彼らを責められるだろうか。
そもそも――ここは公式地図に乗っていないダンジョンなのだから、探索も情報収集も違法、かつ自己責任なのだ。ディメント王国が公式に認めていないダンジョンの探索を冒険者に禁止する理由は二つあった。一つは危険が伴うから。
公式のダンジョンには必ず確認されている「復活の像」と呼ばれる救済装置がないのだ。これは魂が消失しなければ事実上老衰や病気以外では不死である「守護者の血を引く者」と呼ばれる冒険者にとって大変危険を伴うことだった。二つ目は冒険者の手に渡したくないなにかが眠っているから。欲深な冒険者に渡したくない程高価な宝か、粗暴な冒険者の手に余る危険なものか、いずれにしろ「ダンジョンで見つけたものは冒険者のもの」という不文律を持つ冒険者たちに渡してはならない何かがある場合だった。
冒険者はダンジョンで見つけたあらゆる宝を「落し物」と呼び、本来なら納めなければならない「迷宮内取得物税」をびた一文も国王に納めない者が大半だった。しかし、通常ダンジョン探索というものはある程度王国側と冒険者側の利害関係の上に成り立っていて、その程度のダンジョン荒らしは黙認されていたし、むしろ冒険者の絶対数を増やすために王国が推奨する風潮すらあった。サラも冒険者を始めてから過去何度も危険なダンジョンへの探索を言葉巧みに推奨する公布を見たことがあった。
―まあ、そうやって冒険者ギルドのいうような「うまい話」はほとんどないのだけど・・・
特定ダンジョン探索に伴う報酬の倍増であったり、希少品の発見報告だったり、お宝の発見数の増加見込み報告書(これが一番信用ならなかった)であったり・・・その時々で王国の出先機関である冒険者ギルドの持ちかける「うまい話」は様々だったが、たいていの場合数か月にわたる壮大な骨折り損に終わることが多く、そういった話につられて指定のダンジョンに潜った冒険者の中には、しばしば危険な罠や獰猛なモンスターとの戦いで消失して帰れなくなる冒険者も多かった。
つまり公式のダンジョン探索というのは「労多くして益少ない」労働である代わりに、管理され、ある程度の安全も保障された仕事だったのだ。
しかし、非公式の…公式地図に乗っていないダンジョンというのは、入潜許可証もない代わりに安全を保障するものも何もなく、だが未踏破なだけにどんなお宝がどれほど眠っているか知れない、いわば本当の冒険なのだ。冒険者、というだけで十分裏稼業に分類されるべき職種だが、冒険稼業が半ば政府によって管理されているディメント王国にあって、未踏破非公式のダンジョン潜入こそが「真の裏稼業」だった。
サラたちがこのダンジョン―「絆の試練場」とささやかれてる裏ダンジョンの話を聞いたのは半年前だ。最深部には未だ手つかずの宝が眠るとも、途方もないマジックアイテムが眠るとも言われ、もう何組もの「裏」冒険者達が挑戦し敗れているということだった。“幸運な”ジャバに“叩き屋”ミリー、ダミアヌスとコスマスの“双子”ほかにも巷で有名な冒険者たちが我先にとこのダンジョンの情報を追い求め・・・大半が場所すらつかめずに探索を打ち切っていた。
裏ダンジョンにまつわる情報を集めることも場合によって違法であるため、サラたちは慎重に酒場や市場での噂に耳を傾け、冒険者ギルドの目をかいくぐりながら、数か月かけて裏ダンジョン専門の悪名高いユニオンをいくつも訪ね、ここの所在地を割り出したのだ。
それですら正確な位置はわからないおぼろげな情報ばかりだった。三人は大枚を払いながらガセネタをいくつも拾い集めその中から場所を特定した。
なので、サラたちがダンジョンそのものを見つけられたのは、もはや僥倖というしかなく、インチキだろうがぼったくりだろうがそのダンジョンの地図といわれるものが手に入ったのも幸運だと思うしかなかった。
「もう、とりあえず私が再測量してるんだからいいじゃない。それに大まかにはあってたわよ、さっきの地図・・・・・ここに来るまでの道筋と、あとは入口のフロアの石段の形だけだったけど。」
「あのなあ、サラ。俺が言ってんのは値段の話だ!そもそもなっ・・・」
「・・・」
「・・・」
アルフレッドが大げさに腕を振り回してさらに文句を叫ぼうとして、言葉尻を切った。それが合図だったかのように、残りの二人も足を止め、静かに何かをうかがうように周囲の気配に耳を澄ませた。
「・・・姿隠しの気配だ。」
アルフレッドは静かにそうつぶやくと、肩にかけていた大斧を構えた。さっきまでの隊の砕けた雰囲気が嘘のように消え去り、戦士は殺気立った憤怒の表情で周囲を睨みつける。
3人はさっと散開するとアルフレッドを前面に押し出して戦闘陣形を組んだ。サラは使い慣れた手斧を引き抜いて構え、パックは低い声で魔術の詠唱に入った。姿隠しはその名の通り姿を消し去る冒険者の技だ。その気配がしたということは、何者か、それもモンスターではなくサラたちと同じ冒険者が近くに潜んでいるということ、さらにその何者かは少なくとも姿をあらわして友好な挨拶とお辞儀を交わすつもりはないということだった。
「ううぅぅぅおおおおおああぁぁぁぁぁあああ!」
突如獣じみた叫び声をあげると、アルフレッドの筋肉が急激に膨れ上がった。それは彼が臨戦態勢に入った証だ。猿叫で理性を弾き飛ばし、極限まで肉体の力を引き出す戦士の技である。並みの冒険者ならこのモンスターじみた剛腕から放たれる斧を受けて、ただではすまないだろう。
前方の闇の中にかすかに何かが動き回る気配がした。間違いなく何者かが姿隠しのまま近寄ってきているようだった。
―潜ってる時間が長いわ・・・本職の盗賊かもしれない、気を付けて―
サラはアルフレッドにささやいた。
姿隠しは本来は盗賊の技である。しかし冒険者の中には幾つもの職を渡り歩き、本来の威力と精度に及ばないながらも他種の技を駆使する者もいる。たとえばパックは魔法使いの呪文を使える僧侶であるし、サラも僧侶を経験し初歩の回復魔法を習得した盗賊だ。
―盗賊か!!
アルフレッドはにやりと口の端をゆがませると未だ姿を現さない相手に向かって大声で叫ぶ。
「姿を現しやがれ!!盗人め!!」
―盗賊だっつってんでしょ・・・このでぶちんっ
心中で舌打ちしながらサラがアルフレッドを睨みつけた瞬間、二人の後方で異変が起こった。
「ひゅ・・・ぐぶっ・・・」
最後尾で呪文を詠唱していたパックが、短い笛の音のような音に続いて濁音を発して喉を抑えてひざをついた。その喉元からはどくどくと鮮血があふれている、明らかに致命傷だ。気配に振り返ったサラは後方の闇の中に素早く走り去る小さな背中を見た。
「そんなっ・・・足音もなくすり抜けたっての!?パック!!」
襲撃者は姿隠しをしたまま無音で前衛の二人の脇を通り抜け、避けようのない一撃でパーティの火力兼回復役を奪ったのだ。恐ろしい手際だった。
「野郎!」
アルフレッドがはじかれた弾丸のようにすぐさま後を追った。
「まって!アル!」
サラの制止する声も聞かずにアルフレッドは襲撃者の消えた暗闇に突進していった。
「ッチ…だから嫌なのよ!突進戦士って!!」
サラは悪態をつくと、チラともう動かないパックを振り返った。血海の中に自らのローブを浸し、ひざを折るようにして倒れこんでいる魔術師はどう見ても死んでいるだろう。しかしパックとて守護者の血を引く冒険者である。ここは非公式のダンジョンである故、ダンジョンの中で復活はできないが、その遺体なり灰なりを持ち帰り、街で復活の儀式を執り行えば何事もなかったかのように生き返る。もちろんそのまま消失してしまうものもいるが、冒険には死が、そして死には消失がつきものであるということは冒険者なら覚悟ができていることなのだ。パックだけでなくサラやアルフレッドも今まで何度もそうやって死にながら消失を免れ、蘇ってきたのだ。
「ちょっとだけまっててね、パック」
そういうとサラはアルフレッドの後を追った。
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無題
ゆきぽーさん>ありがとうございます!!実はこれ、去年の春に書いたもので、書き溜めてあるんですが話が古かったり、ちょっと今思うとどうなのって名前が出たりしていたんで書き直しつつ掲載しておきたいと思いますっ!ゆきぽさん好みの作風だった?w
たまさん>長編になっちゃいましたねwでも盗賊-魔法使い-戦士-僧侶の順で書いているので、このほかにもありますよ。書き直しつつ少しずつ載せますね~
たまさん>長編になっちゃいましたねwでも盗賊-魔法使い-戦士-僧侶の順で書いているので、このほかにもありますよ。書き直しつつ少しずつ載せますね~
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なんか一生懸命押したり書いたりする仕事
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ゲーム・縄跳び
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弱い。ひたすら弱い。とにかく弱い
あるときは宝箱の中から爆弾を出すシーフ、またあるときは攻撃の届かないファイター。
ただ皆様の平和と健康と幸福を祈るだけの存在
E-mail:
wizardry_online31jp@yahoo.co.jp
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