このブログは、wizon wizardryonline (ウィザードリィオンライン)のプレイ風景をつづったものです
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書き溜めていた小説を手直ししながら少しずつ掲載していきます。
(前回までのあらすじ)
【盗賊】第1回はこちら
次回【盗賊】はこちら
湘南愛海学園二年三組に転校してきた白眼殺目(しろめあやめ)は可愛いけどちょっぴりドジな19歳(留年経験あり)、転校初日にラリアットをかまされた同じクラスの佐藤撲殺(さとうぼくさつ)のことが気になっちゃって授業のトライアスロンの最中に自転車から転落しちゃった-☆
でも、大丈夫、こんな時のためにほうれん草の缶詰持ってたんだ!
片手で缶詰にぎりつぶして、一気飲み!ポパイ並みの剛腕になって自転車かついでラストスパートよ!殺目、恋のレースもこの調子で走り切ろうね♡
(前回までのあらすじ)
【盗賊】第1回はこちら
次回【盗賊】はこちら
湘南愛海学園二年三組に転校してきた白眼殺目(しろめあやめ)は可愛いけどちょっぴりドジな19歳(留年経験あり)、転校初日にラリアットをかまされた同じクラスの佐藤撲殺(さとうぼくさつ)のことが気になっちゃって授業のトライアスロンの最中に自転車から転落しちゃった-☆
でも、大丈夫、こんな時のためにほうれん草の缶詰持ってたんだ!
片手で缶詰にぎりつぶして、一気飲み!ポパイ並みの剛腕になって自転車かついでラストスパートよ!殺目、恋のレースもこの調子で走り切ろうね♡
#1.盗賊②
狭く曲がりくねった暗闇を手探りで抜けると、やや広い部屋になっていた。瓦解した柱や構造物が散在しており、石畳の空間のそこかしこにトーチがともしてあった。小規模なキャンプの跡もあるようだ。あの襲撃者やその仲間たちが生活していたのだろうか。
「ほんっとに・・・気持ちはわかるけど落ち着いてよね、アル。こんな所まで来ちゃったわ」
周囲を警戒しながらサラはアルフレッドに向かってそう釘を刺した。
「大丈夫だ、俺もそこまで頭に血が上っちゃいない。」
ドワーフの戦士も油断なく武器を構えたままそう答える。回復役であるパックがやられた以上、このまま引き返すのは進む以上に危険な選択だった。背後をさっきの襲撃者にさらしつつ無事に地上に帰ることができる保証はない。あの敵を仕留めないと進むことも戻ることもできないのだ。結果的にアルフレッドの行動は短慮というより理にかなっていた。
「一気に俺たち3人を殺らなかったってことは一人ってことだ。魔法役を初めに潰したのがいい証拠だ。ここであいつを叩いて危険を除いておくぞ。パックは・・・あとで必ず回収してやる。」
サラは、表面上の言動の粗暴さとは裏腹に理性的な思考をするアルフレッドの様子に安心すると、無言でうなずいた。猪武者を絵にかいたような戦士のアルフレッドだが、彼はどんなに混乱した状況でも戦闘時の判断は冷静なのだ、このとっさの状況判断にいままで何度助けられたかわからない。
ならば、今必要なのは情報収集だとサラは考え、盗賊の斥候としての本領を発揮するため意識を部屋の隅々に向けた。
するとかすかな腐臭に交じって、嗅いだ事のない獣皮と血のにおいがする。目を凝らすと前方に何か巨大なものが横たわっているのに気が付いた。
「まって、アルフレッド。あれ、なにかしら」
「わからん・・・モンスターの死体か・・・?」
アルフレッドもそれに気が付いたようだった。警戒しつつ近寄ってみてみるとそれはまがまがしい外見をした超大型の異形の生き物の死体だった。闇天使に類するモンスターだろうか?市街地に浮かんでいる喧伝用の大型気球か鯨のような青黒い腹を上に向け、乱杭歯をむき出しにした鬼のような顔を苦痛にゆがませて息絶えている。その姿は悪夢から抜け出してきた生物そのものであり、これが生きて闊歩している姿は想像するだに恐ろしいものだった。
「こ・・・こいつは大物だ。グランデヴィルの親類か?クオパティ神殿の閲覧室でしか見たことがなかったぜ」
アルフレッドがおもわず感嘆の声をあげた。グランデヴィルは並み居るモンスターの中でも冒険者に特に恐れられている種類だ。強力な魔法と恐ろしい腕力、そして底なしのタフさを持っている闇天使という半神に近い存在で、もしこれが生きてサラたちと出会っていたら、万全を期しても倒せたかどうかすらわからない。
「見て。急所を狙ってめった刺しにしてある。柳葉状の刺し傷…片刃の剣か槍かな…?魔法の跡はないようだけれど…相当腕の立つパーティが倒したのね」
サラはそういったあと、もしかしたらそれがさっきの襲撃者の一味ではないかと考えて胃の腑が重くなった。
―でも一人盗賊にできることじゃないわ。仲間に腕の立つ戦士か侍がいるんだ。
その想像はまたもやサラを気落ちさせるものだったが、仲間がいるならなぜ先ほどは一緒に襲ってこなかったのかと考えると辻褄が合わない気がした。
―たまたま、さっきの盗賊が一人で巡回しているところに遭遇しただけだとしたら、仲間はまだ別にいるかも・・・いや、もしかしたら、こいつを倒したパーティとさっきのポークル盗賊は別かしら…ああ、もう考えれば考えるほど絶望的だわ。
サラはパーティの司令塔として、常に最悪の事態を想定して行動することが身に沁みこんでいて、考えれば考えるほど自分たちの生存率が落ちていくような気がした。
―集中、しないと…まだ敵はどこかにいるのは間違いないんだから。
そう心の中で呟いて、ぎゅっと手斧の柄を握りしめたとき、アルフレッドが口を開いた。
「サラ、ここにもう一つ死体がある。ポークルだ。」
指差された方向を見ると確かにポークルらしいサイズの戦士の死体があった。フルバイザーで覆われていてわからないがおそらく鎧のデザインからすると女性だ。よく鍛えられた合金鎧を身にまとってダンジョンの石壁にもたれかかるようにして倒れていた。そばにはその戦士のものと思われる槍が立てかけられている。魔法による高い鍛錬を示すように淡い緑色に輝いている業物だった。槍の形状と先ほどの死体の刺し口から、このモンスターを倒した本人にとみて間違いはないだろう。やはりサラの予想は当たっていた。だが、当の本人は死んでいたのだ。おそらくあのモンスターと相打ちになったんだろう、これで辻褄があう。
「きっとさっきの盗賊とこのポークルの戦士は相棒だったのね」
致命傷はなんだろう・・・胸の部分に何かの刃が刺さっているようにも見える、あれが死因だろうか、死体の腐敗はそんなにしていないようだけど・・・さらに詳しく調べようとサラが近づいたとき、闇の中から声がした。
「そいつに触るな。」
声の主が姿を現した。頭布を付けてサラと同じ小金属片鎧を付けたポークルの盗賊だ。先ほどサラたちを襲った一人盗賊に間違いないだろう。
頭布からは元は鮮やかだったであろう紫色の巻き毛が覗いていたが、今はくすんだ色に成り果てている。疲れて見え、それでもなお鋭い殺気をたたえた佇まいは一般に愛らしいとされるポークルの印象を覆すものだった。そしてその双眸は濡れたように赤く輝いていた。
―やっぱり…赤眼だ。
守護者の血を引く者は、同じ守護者の血を引く者を殺傷すると瞳が赤くなる。これは贖罪が済むまで続く不思議な現象だったが、一説には魂が血の色に染まったからだとか、神が罪人を選別しやすいようにだとか言われているが、ともかくそうやって瞳が赤く染まったものは「犯罪者」または「赤眼」とよばれてディメント王国政府から追われる身になるだけでなくまっとうな冒険者達からも避けられていた。普段から荒事を旨とする冒険者達にとっても、同業者を殺したものは蛇蝎のごとく嫌われる風潮があったのだ。赤く瞳の染まった冒険者はひっそりと人目を避け、あるものはダンジョンにこもり、あるものは王国が管理を放棄したスラムタウンで独自のコミュニティの中で生活していた。赤眼になる理由は物取りの上の殺人、たんなる殺人嗜好から、純粋に強者との殺し合いを望んで修羅の道に入ったもの、事故(彼らはそう主張する)までさまざまであったが、少なくとも危険な相手には違いないのである。彼は先ほどパックを殺した時から赤くなったのではないだろう。その瞳の深い赤色は殺人を重ねている重犯罪者の風貌だった。
「出やがったな盗賊」
アルフレッドが戦斧を一振して構えると赤眼の盗賊に向き直った。もはや一歩踏みだせば必殺の間合いである。対するポークル盗賊は別段武器を構えるまでもなく。現れた位置に立っているだけだった。
「聞こえたか?そいつから離れるんだ」
盗賊はもう一度静かに告げるとアルフレッドとサラを睨みつけた。
「てめえ、なめてんのか…ドロボーらしくこそこそしてりゃ可愛げもあるが、戦士に正面から挑む盗賊なんざ、手の込んだ自殺だぜ?」
―アル、気を付けて、姿を見せたのは罠かもしれない。
サラがそう囁いたのを聞いているのか、アルフレッドはさらに兆発の言葉を続けた。
「こっちは仲間を一人殺られてるんだ、楽に死ねると思うなよ。すぐにお前の仲間のそばに仲良く並べてやる」
「そこから、はなれろ、さもなくば ころす」
「ぃぃいやってみやがれ!!」
叫ぶが早いかアルフレッドは恐るべき速度で斧をふるった、まるで慣性を無視したような軌道で剛力に任せて戦斧をふりまわす。しかしその嵐のような連撃をポークル盗賊はかすかに体をよじったり、踏み出したりするだけですべて避けきっていた。
「このっ・・・」
焦れたアルフレッドが必殺の一撃を加えようとして殊更に踏み込んだその時、突如その足元がはじけ、魔法の光をまき散らしながら罠が発動した。
アルフレッドの着込んでいた甲冑が表面から泡のはじけるような音とともにぼろぼろと溶かされていく。
―誘導したんだ、アルが罠に踏み込むように。
「アル!」
たまらずサラが叫んで駆け寄ろうとしたとき、それまで防戦一方だったポークル盗賊の短刀がひらめいた。一呼吸のうちにアルフレッドの体に数筋の斬撃が叩き込まれる。
-!!
しかしアルフレッドはひるまなかった。分厚い鎧だけでなく、鋼の筋肉を自慢とする戦士にポークルの短刀の踏込で致命傷をあたえることはむずかしい。事実、アルフレッドは切られた瞬間に今の攻撃が自分の筋肉を抜いていないと確信していた。
「軽ぃんだよ!」
そういいつつ、スピードでの勝負では向こうに分があると判断したアルフレッドは斧を捨てると腰の剣で抜きざまに相手を突き刺した。斧の振り以上の神速の抜き打ちである。ポークル盗賊も短刀を連撃で振りぬいたすきをつかれたのか、ドワーフの怪力に肩口をえぐられて体ごと後ろに飛ばされた。
「小細工も、もうしまいだな…なますにしてやる」
アルフレッドが残虐な笑みを浮かべ、とどめを刺そうとポークル盗賊に近づいた時だった。
「おおっと・・?」
頓狂な声を出して、突然アルフレッドが尻もちをついた。手足に力が入らない。体を見ると先ほど切り付けられた箇所からわずかに滲み出た血が見える。盗賊の刃は罠で布のように柔らかくなった鎧を抜いてわずかだがその下の肉体に切り込んでいたのだ。ドワーフの戦士は、ぺたんと座り込んだまま呆然と盗賊を睨みつけた。
「くそ・・・なんでだ。体が動かねぇ・・・ちくしょう」
アルフレッドが動けなくなったのを確認してから、シーフはゆっくりと体を起こすと、剣で打たれた肩の骨が砕けていないのを確認して、おもむろに近づいてきた。
「・・・魔獣の牙から採った毒だ。無理に動くと苦しむぞ。」
そういいつつも、赤眼の盗賊は油断なくサラに注意を向けている、不意を突くこともできない。
「じっとしていろ、暴れないなら、楽に死なせてやる」
それが屈強なドワーフの戦意を折る一言になったのか。アルフレッドはすさまじい形相で眼前のシーフを睨みつけ、黙って盗賊の刃をその首に受け入れた。
―ほんとに冗談じゃない!こんな盗賊一人に全滅なんて!
何もできないまま一瞬にして歴戦の魔法使いと戦士が屠られた。たった一人の盗賊なんかに!!自身も盗賊であるサラには身の毛もよだつほど理解できていた。この赤眼の盗賊がどれほどの手練れなのかということ、そして自分とどれだけ力量が開いているかということを。
ポークル盗賊は丁寧にアルフレッドの首筋から短刀を引き抜くと、彼の死体を押し倒し、返り血を避けた。淡々と強靭な戦士を屠った彼は、また新たに血に濡れ直したような赤い瞳でサラを見た。
-つぎはお前だ。
そう赤眼の盗賊が言ったと錯覚するほどに明確な殺意がその視線に込められていた。サラが戦慄してバックステップで間合いを取ろうとした時、目の前の盗賊の姿がふっと消えた。
―姿隠しだ
何か次の手を打つ前に、サラは後頭部に強い衝撃を受けて昏倒した。最後にみたのは部屋の隅で合金鎧を着て壁に寄りかかったまま死んでいるポークル戦士の物言わぬ死体だった。
狭く曲がりくねった暗闇を手探りで抜けると、やや広い部屋になっていた。瓦解した柱や構造物が散在しており、石畳の空間のそこかしこにトーチがともしてあった。小規模なキャンプの跡もあるようだ。あの襲撃者やその仲間たちが生活していたのだろうか。
「ほんっとに・・・気持ちはわかるけど落ち着いてよね、アル。こんな所まで来ちゃったわ」
周囲を警戒しながらサラはアルフレッドに向かってそう釘を刺した。
「大丈夫だ、俺もそこまで頭に血が上っちゃいない。」
ドワーフの戦士も油断なく武器を構えたままそう答える。回復役であるパックがやられた以上、このまま引き返すのは進む以上に危険な選択だった。背後をさっきの襲撃者にさらしつつ無事に地上に帰ることができる保証はない。あの敵を仕留めないと進むことも戻ることもできないのだ。結果的にアルフレッドの行動は短慮というより理にかなっていた。
「一気に俺たち3人を殺らなかったってことは一人ってことだ。魔法役を初めに潰したのがいい証拠だ。ここであいつを叩いて危険を除いておくぞ。パックは・・・あとで必ず回収してやる。」
サラは、表面上の言動の粗暴さとは裏腹に理性的な思考をするアルフレッドの様子に安心すると、無言でうなずいた。猪武者を絵にかいたような戦士のアルフレッドだが、彼はどんなに混乱した状況でも戦闘時の判断は冷静なのだ、このとっさの状況判断にいままで何度助けられたかわからない。
ならば、今必要なのは情報収集だとサラは考え、盗賊の斥候としての本領を発揮するため意識を部屋の隅々に向けた。
するとかすかな腐臭に交じって、嗅いだ事のない獣皮と血のにおいがする。目を凝らすと前方に何か巨大なものが横たわっているのに気が付いた。
「まって、アルフレッド。あれ、なにかしら」
「わからん・・・モンスターの死体か・・・?」
アルフレッドもそれに気が付いたようだった。警戒しつつ近寄ってみてみるとそれはまがまがしい外見をした超大型の異形の生き物の死体だった。闇天使に類するモンスターだろうか?市街地に浮かんでいる喧伝用の大型気球か鯨のような青黒い腹を上に向け、乱杭歯をむき出しにした鬼のような顔を苦痛にゆがませて息絶えている。その姿は悪夢から抜け出してきた生物そのものであり、これが生きて闊歩している姿は想像するだに恐ろしいものだった。
「こ・・・こいつは大物だ。グランデヴィルの親類か?クオパティ神殿の閲覧室でしか見たことがなかったぜ」
アルフレッドがおもわず感嘆の声をあげた。グランデヴィルは並み居るモンスターの中でも冒険者に特に恐れられている種類だ。強力な魔法と恐ろしい腕力、そして底なしのタフさを持っている闇天使という半神に近い存在で、もしこれが生きてサラたちと出会っていたら、万全を期しても倒せたかどうかすらわからない。
「見て。急所を狙ってめった刺しにしてある。柳葉状の刺し傷…片刃の剣か槍かな…?魔法の跡はないようだけれど…相当腕の立つパーティが倒したのね」
サラはそういったあと、もしかしたらそれがさっきの襲撃者の一味ではないかと考えて胃の腑が重くなった。
―でも一人盗賊にできることじゃないわ。仲間に腕の立つ戦士か侍がいるんだ。
その想像はまたもやサラを気落ちさせるものだったが、仲間がいるならなぜ先ほどは一緒に襲ってこなかったのかと考えると辻褄が合わない気がした。
―たまたま、さっきの盗賊が一人で巡回しているところに遭遇しただけだとしたら、仲間はまだ別にいるかも・・・いや、もしかしたら、こいつを倒したパーティとさっきのポークル盗賊は別かしら…ああ、もう考えれば考えるほど絶望的だわ。
サラはパーティの司令塔として、常に最悪の事態を想定して行動することが身に沁みこんでいて、考えれば考えるほど自分たちの生存率が落ちていくような気がした。
―集中、しないと…まだ敵はどこかにいるのは間違いないんだから。
そう心の中で呟いて、ぎゅっと手斧の柄を握りしめたとき、アルフレッドが口を開いた。
「サラ、ここにもう一つ死体がある。ポークルだ。」
指差された方向を見ると確かにポークルらしいサイズの戦士の死体があった。フルバイザーで覆われていてわからないがおそらく鎧のデザインからすると女性だ。よく鍛えられた合金鎧を身にまとってダンジョンの石壁にもたれかかるようにして倒れていた。そばにはその戦士のものと思われる槍が立てかけられている。魔法による高い鍛錬を示すように淡い緑色に輝いている業物だった。槍の形状と先ほどの死体の刺し口から、このモンスターを倒した本人にとみて間違いはないだろう。やはりサラの予想は当たっていた。だが、当の本人は死んでいたのだ。おそらくあのモンスターと相打ちになったんだろう、これで辻褄があう。
「きっとさっきの盗賊とこのポークルの戦士は相棒だったのね」
致命傷はなんだろう・・・胸の部分に何かの刃が刺さっているようにも見える、あれが死因だろうか、死体の腐敗はそんなにしていないようだけど・・・さらに詳しく調べようとサラが近づいたとき、闇の中から声がした。
「そいつに触るな。」
声の主が姿を現した。頭布を付けてサラと同じ小金属片鎧を付けたポークルの盗賊だ。先ほどサラたちを襲った一人盗賊に間違いないだろう。
頭布からは元は鮮やかだったであろう紫色の巻き毛が覗いていたが、今はくすんだ色に成り果てている。疲れて見え、それでもなお鋭い殺気をたたえた佇まいは一般に愛らしいとされるポークルの印象を覆すものだった。そしてその双眸は濡れたように赤く輝いていた。
―やっぱり…赤眼だ。
守護者の血を引く者は、同じ守護者の血を引く者を殺傷すると瞳が赤くなる。これは贖罪が済むまで続く不思議な現象だったが、一説には魂が血の色に染まったからだとか、神が罪人を選別しやすいようにだとか言われているが、ともかくそうやって瞳が赤く染まったものは「犯罪者」または「赤眼」とよばれてディメント王国政府から追われる身になるだけでなくまっとうな冒険者達からも避けられていた。普段から荒事を旨とする冒険者達にとっても、同業者を殺したものは蛇蝎のごとく嫌われる風潮があったのだ。赤く瞳の染まった冒険者はひっそりと人目を避け、あるものはダンジョンにこもり、あるものは王国が管理を放棄したスラムタウンで独自のコミュニティの中で生活していた。赤眼になる理由は物取りの上の殺人、たんなる殺人嗜好から、純粋に強者との殺し合いを望んで修羅の道に入ったもの、事故(彼らはそう主張する)までさまざまであったが、少なくとも危険な相手には違いないのである。彼は先ほどパックを殺した時から赤くなったのではないだろう。その瞳の深い赤色は殺人を重ねている重犯罪者の風貌だった。
「出やがったな盗賊」
アルフレッドが戦斧を一振して構えると赤眼の盗賊に向き直った。もはや一歩踏みだせば必殺の間合いである。対するポークル盗賊は別段武器を構えるまでもなく。現れた位置に立っているだけだった。
「聞こえたか?そいつから離れるんだ」
盗賊はもう一度静かに告げるとアルフレッドとサラを睨みつけた。
「てめえ、なめてんのか…ドロボーらしくこそこそしてりゃ可愛げもあるが、戦士に正面から挑む盗賊なんざ、手の込んだ自殺だぜ?」
―アル、気を付けて、姿を見せたのは罠かもしれない。
サラがそう囁いたのを聞いているのか、アルフレッドはさらに兆発の言葉を続けた。
「こっちは仲間を一人殺られてるんだ、楽に死ねると思うなよ。すぐにお前の仲間のそばに仲良く並べてやる」
「そこから、はなれろ、さもなくば ころす」
「ぃぃいやってみやがれ!!」
叫ぶが早いかアルフレッドは恐るべき速度で斧をふるった、まるで慣性を無視したような軌道で剛力に任せて戦斧をふりまわす。しかしその嵐のような連撃をポークル盗賊はかすかに体をよじったり、踏み出したりするだけですべて避けきっていた。
「このっ・・・」
焦れたアルフレッドが必殺の一撃を加えようとして殊更に踏み込んだその時、突如その足元がはじけ、魔法の光をまき散らしながら罠が発動した。
アルフレッドの着込んでいた甲冑が表面から泡のはじけるような音とともにぼろぼろと溶かされていく。
―誘導したんだ、アルが罠に踏み込むように。
「アル!」
たまらずサラが叫んで駆け寄ろうとしたとき、それまで防戦一方だったポークル盗賊の短刀がひらめいた。一呼吸のうちにアルフレッドの体に数筋の斬撃が叩き込まれる。
-!!
しかしアルフレッドはひるまなかった。分厚い鎧だけでなく、鋼の筋肉を自慢とする戦士にポークルの短刀の踏込で致命傷をあたえることはむずかしい。事実、アルフレッドは切られた瞬間に今の攻撃が自分の筋肉を抜いていないと確信していた。
「軽ぃんだよ!」
そういいつつ、スピードでの勝負では向こうに分があると判断したアルフレッドは斧を捨てると腰の剣で抜きざまに相手を突き刺した。斧の振り以上の神速の抜き打ちである。ポークル盗賊も短刀を連撃で振りぬいたすきをつかれたのか、ドワーフの怪力に肩口をえぐられて体ごと後ろに飛ばされた。
「小細工も、もうしまいだな…なますにしてやる」
アルフレッドが残虐な笑みを浮かべ、とどめを刺そうとポークル盗賊に近づいた時だった。
「おおっと・・?」
頓狂な声を出して、突然アルフレッドが尻もちをついた。手足に力が入らない。体を見ると先ほど切り付けられた箇所からわずかに滲み出た血が見える。盗賊の刃は罠で布のように柔らかくなった鎧を抜いてわずかだがその下の肉体に切り込んでいたのだ。ドワーフの戦士は、ぺたんと座り込んだまま呆然と盗賊を睨みつけた。
「くそ・・・なんでだ。体が動かねぇ・・・ちくしょう」
アルフレッドが動けなくなったのを確認してから、シーフはゆっくりと体を起こすと、剣で打たれた肩の骨が砕けていないのを確認して、おもむろに近づいてきた。
「・・・魔獣の牙から採った毒だ。無理に動くと苦しむぞ。」
そういいつつも、赤眼の盗賊は油断なくサラに注意を向けている、不意を突くこともできない。
「じっとしていろ、暴れないなら、楽に死なせてやる」
それが屈強なドワーフの戦意を折る一言になったのか。アルフレッドはすさまじい形相で眼前のシーフを睨みつけ、黙って盗賊の刃をその首に受け入れた。
―ほんとに冗談じゃない!こんな盗賊一人に全滅なんて!
何もできないまま一瞬にして歴戦の魔法使いと戦士が屠られた。たった一人の盗賊なんかに!!自身も盗賊であるサラには身の毛もよだつほど理解できていた。この赤眼の盗賊がどれほどの手練れなのかということ、そして自分とどれだけ力量が開いているかということを。
ポークル盗賊は丁寧にアルフレッドの首筋から短刀を引き抜くと、彼の死体を押し倒し、返り血を避けた。淡々と強靭な戦士を屠った彼は、また新たに血に濡れ直したような赤い瞳でサラを見た。
-つぎはお前だ。
そう赤眼の盗賊が言ったと錯覚するほどに明確な殺意がその視線に込められていた。サラが戦慄してバックステップで間合いを取ろうとした時、目の前の盗賊の姿がふっと消えた。
―姿隠しだ
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ダミ
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職業:
なんか一生懸命押したり書いたりする仕事
趣味:
ゲーム・縄跳び
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弱い。ひたすら弱い。とにかく弱い
あるときは宝箱の中から爆弾を出すシーフ、またあるときは攻撃の届かないファイター。
ただ皆様の平和と健康と幸福を祈るだけの存在
E-mail:
wizardry_online31jp@yahoo.co.jp
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