このブログは、wizon wizardryonline (ウィザードリィオンライン)のプレイ風景をつづったものです
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ヴァレンタインデーですね。ヴァー。
(前回までのあらすじ)
次回【僧侶】はこちら
世界観の設定とかは完全な私の妄想ではなく、先日発売された「Wizardry公式設定集」に準拠させているつもりですが、書かれていない部分は勝手に作っています。つまり
っていうスタンスです。
(前回までのあらすじ)
次回【僧侶】はこちら
世界観の設定とかは完全な私の妄想ではなく、先日発売された「Wizardry公式設定集」に準拠させているつもりですが、書かれていない部分は勝手に作っています。つまり
っていうスタンスです。
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僧侶②
上級僧侶であるアンダーソンが率いるクオパティ法制聖騎士団第六十二戦術中隊が、外辺境と呼ばれる非統治地区への作戦任務に向かったのは約70時間前の事だった。
任務の内容は宗教国家クオパティ法制院に敵対的な異教徒教団「砂漠の王」に対する宗教武力弾圧である。「砂漠の王」は無数にあるアヴルール以外の神を奉じる邪神異教徒集団の中でも少数だが非常に戦闘的な一派として知られていて、長らく反法制院勢力として政府と対立し続けていた。
同時に「砂漠の王」の中心人物であるエイケン=ガロムという男が目的であった。ガロムは昨年末にクオパティ法制院の首都において三度の市民への無差別攻撃事件を起こした疑いがかけられていたが、これまで全くその素性や所在がつかめなかった人物であり、今回彼の発見報告を受けて法制院僧兵局が逮捕に乗り出したのだ。
―しかし、これはなんだ。まるきり待ち伏せを受けたのはこっちの方だ。
4個小隊、総勢24名の部隊で作戦地域に赴いたアンダーソンたちを待っていたのは重武装した「砂漠の王」の実行部隊による待ち伏せ攻撃だった。
ガロムが潜伏していたという情報のあった村で数十名の敵に襲撃を受け、装備を失い死傷者を出しながらもなんとか近傍の古砦に逃げ込んだアンダーソン達はここに陣をはりながら丸一日籠城していた。
「通信官、本部との連絡は回復しそうか?」
丸裸だった聖堂の入口にとりあえずつけられた扉をくぐりながらアンダーソンは声をかけた。
小さくとも堅牢なつくりをしていた古砦の最奥、もっとも頑丈だった聖堂が彼らの本陣である。他の戦士達の交戦中も必死で長距離念話による本隊との連絡を取り続けていた通信官が暗い表情で答えた。
「ダメです、アンダーソン司祭。念話通信を妨害する対抗魔法の濃度が濃く、救難信号すらおくれません。」
若い通信官の頬はこけ、その顔は憔悴しきっていた。長距離念話は魔法の中でも最も魔力の消耗の激しい部類だ、長時間試みるだけで大量の魔力と体力を消費せざるを得ない。
「そうか。休めといいたいところだが、お前が頼りだ。もう一度頼む。」
通信官は頷いて再度瞑想し、念話を試み始めた。
―そろそろ兵たちの体力も士気も限界だ。どうしたらいい…
聖堂の中には、これまでの戦闘で負傷した戦士たちも運び込まれていた。彼らを治療するのも僧侶の役目である。アンダーソンの隊に配属されていた僧侶は三人いた、1人は最初の戦闘で死亡し、1人はアンダーソン自身、そして残りの1人が今目の前で煮沸消毒用の湯桶をひっくり返したこのバカノーム女だった。
「ハンナ!ふざけてるのか!」
忌々しくアンダーソンはそのノームの女の名前を呼んだ。
「あっっつ!はいっ、アンダーソン司祭、ふざけてませんっ」
新人のノームの僧侶はひっくり返した湯桶から足が抜けないという二重の失態に対処できず、あっついあっつい言いながら右往左往している。
―ふざけてるって意味が俺とお前で違うのか。
そう言いかけたのをぐっと我慢すると、アンダーソンは負傷兵達を診るために急ごしらえのベッドに向かった。
「う…司祭…さっきの地響きは何です?戦闘は収まったんですか?」
全身に霊薬に漬けた包帯を巻きつけられた戦士が、苦しそうに訪ねた。
「ああ…奴らトロールまで繰り出してきやがったが心配するな、リジーと俺が無限の監獄あたりまでやつのデカ尻を蹴り飛ばしてやったからな。敵も今夜の夜襲が失敗してしばらくおとなしくしてるだろう、安心して眠れ。」
戦士はアンダーソンの軽口に微笑むと、目を閉じたまま荒い息をついた。
―血を失いすぎている、いかんな。
紫色になった唇と爪を見てアンダーソンは舌打ちをした。彼は初めの戦闘で肝の臓を刺され大量の失血をしていた。魔法で傷は塞いだが、失った体力を急速に戻すことはできない。賦活魔法のかけられた休舎で休息が取れれば別だが、当初アンダーソンたちは長期的な戦いが想定された任務ではなかったため、簡易キャンプしか持ち合わせがなかった。
それですらフル回転させているが、如何せん回復が追い付かない。
―吸血鬼みたいに他人の血を流しこむ方法がありゃ楽なんだが…クソッ
古代ドラグーン時代やダルア皇国時代にはそういう技術も存在したらしい、またハーサント連邦でも一部そういう医療が生まれているという話を聞いたことがあったが、ここクオパティ法制院は魔法偏重主義がはびこった文化圏である。確かに魔法による医療は近隣諸国で最も進んでいたが、人体の構造に対する理解や機械化された医療が遅れていた。
アンダーソンはクオパティの癒し手としてほぼ名人の域に達していた。「癒し殺しのアンダーソン」とは彼の僧侶呪文の技の冴えに次々負傷者が全快し、文字通り死ぬまで戦えることから隊員に揶揄された言葉である。
しかし彼は僧侶の技を極めれば極めるほど魔法の力だけでは癒しきれない傷や病があることに気が付いてもいた。我が国の魔法医療はもはや限界にきている、そう感じたアンダーソンは法制院の魔法学会では毛嫌いされがちなハーサント連邦の合理実践主義的な医学の知識を、人目を忍んで学んでいた。
「ク、クオパティの御業を以て彼の者の傷を癒せ…癒…」
ハンナが新しく運び込まれた血まみれの戦士の傷を魔法で治療しようとしているのを見て、アンダーソンは彼女の手をとり、魔法の詠唱を中断させた。
「ハンナ、今は戦闘中じゃない。無駄に回復魔法を使うな、創部の状態を確かめてから局所に使え。出血箇所を検索して、止血してから回復魔法だ。処置するのは重大な傷からだ。必要のない回復魔法は極力控えろ。お前の魔力は隊の命綱だ、必要最低限の魔力で最大の効果を出せ。」
ノームの新人僧侶はきょとんとしているようだった。無理もないとアンダーソンは思う。
信仰心の高さ、魔法の力でのみ傷の回復を行い、傷つき倒れた人すべての傷を余すことなく癒せと教わる純粋なクオパティの僧侶には、アンダーソンのような僧侶兵の考えはすぐにはなじまないはずだ。しかもハンナはクオパティ法制院の治癒学科を5週間前に出たばかりの新人である。学校で習った理論と戦場のやり方の矛盾に即対応できるわけがない。
―だが、ここで覚えてもらわねばならん。俺だけでは今のこの隊を支えきれん。
「検索するのは、口、鼻、耳からだ。見た目の傷の派手さに惑わされずに生命を脅かす傷から対処しろ。傷は必ず視認してから、見えない傷は触診で深さを判断するんだ。」
「は…はい、わかりました。」
ふるえた声で答えた新人僧侶が恐る恐る戦士の胸に触れた。その途端戦士が大きくうめいた。
「あ…ぁ…痛かったですか?ごめんなさいっ」
「莫迦野郎、撫でるように触って何がわかるんだ、ただ痛がらせてどうする。」
こうやるんだよといってアンダーソンが両手でハの字を作って無造作に戦士の胸を包み込むとぐっと押し込んだ。
「ぎゃあああ!」
たまらず戦士が叫ぶ。
「ほら、これで肋骨が折れてるのがわかっただろ。さあ、肺に突き刺さらないように注意して傷を治してやれ。」
アンダーソンがそういったとき、聖堂の外にいた見張りのポークルの野伏せが飛び込んできた。
「アンダーソン、ちょっと来てくれ。」
「どうした、ギゾック。再襲撃か?」
処置をしておけよとハンナに指示を出して、アンダーソンが聖堂の外に出た。
「西門の地下の方角から変な音が聞こえるんだ。」
ポークルのレンジャー、ギゾック・シニ・ウィキンはアンダーソンと最も付き合いの古い兵士だった。正式なクオパティ法制聖騎士団の一員ではないが、アンダーソンとともに数多くの戦場に赴いた信頼できる男だ。彼の特技は斥候や偵察であり、ポークルの中でも並はずれた視覚や聴覚は隊にとっても大きな武器だった。先刻の夜襲も彼が察知し、アンダーソンが戦術で防衛したようなものだった。
ギゾックは耳を地面につけると、慎重に何かを探る様に意識を集中させた。アンダーソンも黙ってその様子を伺う。
聖堂の中から、また何かをひっくり返すような音が聞こえた。
「ハンナ!!静かにしろ!!」
アンダーソンが振り返ってそう叫んだ。その後しばらく様子を伺っていたギゾックが緊張した面持ちで顔をあげた。
「軽い…たくさんの藁半紙をこすり合わせるような音だ…一直線にこっちに向かってくる…大勢の…いや大量の足の音…」
そこまで言って言葉を切ると、二人は顔を見合わせた。アンダーソンが聖堂の扉に体当たりをして扉ごと勢いよく中に飛び込むと大声で叫んだ。
「排水口から離れろ!!早く!!」
「はい?」
間の悪いことにバケツ一杯にたまった患者の血膿を、ハンナが排水口に流し込もうとしている最中だった。
―アヴル・シット!
アンダーソンは自らの体に不可視の聖なる障壁を纏うと排水口に覆いかぶさった。その数瞬後に排水口から平べったい手のひらほどの黄金色の蟲が顔を出す。
「え?」
まだ状況がよく呑み込めていないハンナの足元にうずくまるアンダーソンの腹の下で、突如爆発が起こった。
「爆弾蟲だ!」
遅れて聖堂に入ってきたギゾックの声も連続して起こるくぐもった爆発音にかき消された。爆弾蟲はぞくぞくと排水口から顔をだし、アンダーソンの体の下で連鎖的に爆発を続けた。
「ぐうううう・・・・うう」
魔法の障壁で爆発の威力を相殺し続けるアンダーソンだったが、すさまじい連鎖爆発に魔法の鎧がもう永く持たない事を悟っていた。
どぅん!
ついに身にまとっていた魔法の障壁が打ち破られ、減殺されたとはいえアンダーソンの体に直接衝撃が届いた。たまらず上半身を跳ね上げたアンダーソンの腹の下から数匹の爆弾蟲が飛び出し、聖堂の中で爆裂した。たちまち聖堂の中は爆煙と爆発音で阿鼻叫喚に包まれた。
「きゃあああああ!」
最後の爆弾蟲が這い出て来て、身動きの取れない戦士たちの寝ているベッドに突進した。アンダーソンは必至でその蟲に飛びつくと両腕で地面に押さえつけた。
「タッチダウンはさせないぜ、ゴキブリ野郎。」
アンダーソンの両手が真っ白な爆炎に包まれた。
僧侶②
上級僧侶であるアンダーソンが率いるクオパティ法制聖騎士団第六十二戦術中隊が、外辺境と呼ばれる非統治地区への作戦任務に向かったのは約70時間前の事だった。
任務の内容は宗教国家クオパティ法制院に敵対的な異教徒教団「砂漠の王」に対する宗教武力弾圧である。「砂漠の王」は無数にあるアヴルール以外の神を奉じる邪神異教徒集団の中でも少数だが非常に戦闘的な一派として知られていて、長らく反法制院勢力として政府と対立し続けていた。
同時に「砂漠の王」の中心人物であるエイケン=ガロムという男が目的であった。ガロムは昨年末にクオパティ法制院の首都において三度の市民への無差別攻撃事件を起こした疑いがかけられていたが、これまで全くその素性や所在がつかめなかった人物であり、今回彼の発見報告を受けて法制院僧兵局が逮捕に乗り出したのだ。
―しかし、これはなんだ。まるきり待ち伏せを受けたのはこっちの方だ。
4個小隊、総勢24名の部隊で作戦地域に赴いたアンダーソンたちを待っていたのは重武装した「砂漠の王」の実行部隊による待ち伏せ攻撃だった。
ガロムが潜伏していたという情報のあった村で数十名の敵に襲撃を受け、装備を失い死傷者を出しながらもなんとか近傍の古砦に逃げ込んだアンダーソン達はここに陣をはりながら丸一日籠城していた。
「通信官、本部との連絡は回復しそうか?」
丸裸だった聖堂の入口にとりあえずつけられた扉をくぐりながらアンダーソンは声をかけた。
小さくとも堅牢なつくりをしていた古砦の最奥、もっとも頑丈だった聖堂が彼らの本陣である。他の戦士達の交戦中も必死で長距離念話による本隊との連絡を取り続けていた通信官が暗い表情で答えた。
「ダメです、アンダーソン司祭。念話通信を妨害する対抗魔法の濃度が濃く、救難信号すらおくれません。」
若い通信官の頬はこけ、その顔は憔悴しきっていた。長距離念話は魔法の中でも最も魔力の消耗の激しい部類だ、長時間試みるだけで大量の魔力と体力を消費せざるを得ない。
「そうか。休めといいたいところだが、お前が頼りだ。もう一度頼む。」
通信官は頷いて再度瞑想し、念話を試み始めた。
―そろそろ兵たちの体力も士気も限界だ。どうしたらいい…
聖堂の中には、これまでの戦闘で負傷した戦士たちも運び込まれていた。彼らを治療するのも僧侶の役目である。アンダーソンの隊に配属されていた僧侶は三人いた、1人は最初の戦闘で死亡し、1人はアンダーソン自身、そして残りの1人が今目の前で煮沸消毒用の湯桶をひっくり返したこのバカノーム女だった。
「ハンナ!ふざけてるのか!」
忌々しくアンダーソンはそのノームの女の名前を呼んだ。
「あっっつ!はいっ、アンダーソン司祭、ふざけてませんっ」
新人のノームの僧侶はひっくり返した湯桶から足が抜けないという二重の失態に対処できず、あっついあっつい言いながら右往左往している。
―ふざけてるって意味が俺とお前で違うのか。
そう言いかけたのをぐっと我慢すると、アンダーソンは負傷兵達を診るために急ごしらえのベッドに向かった。
「う…司祭…さっきの地響きは何です?戦闘は収まったんですか?」
全身に霊薬に漬けた包帯を巻きつけられた戦士が、苦しそうに訪ねた。
「ああ…奴らトロールまで繰り出してきやがったが心配するな、リジーと俺が無限の監獄あたりまでやつのデカ尻を蹴り飛ばしてやったからな。敵も今夜の夜襲が失敗してしばらくおとなしくしてるだろう、安心して眠れ。」
戦士はアンダーソンの軽口に微笑むと、目を閉じたまま荒い息をついた。
―血を失いすぎている、いかんな。
紫色になった唇と爪を見てアンダーソンは舌打ちをした。彼は初めの戦闘で肝の臓を刺され大量の失血をしていた。魔法で傷は塞いだが、失った体力を急速に戻すことはできない。賦活魔法のかけられた休舎で休息が取れれば別だが、当初アンダーソンたちは長期的な戦いが想定された任務ではなかったため、簡易キャンプしか持ち合わせがなかった。
それですらフル回転させているが、如何せん回復が追い付かない。
―吸血鬼みたいに他人の血を流しこむ方法がありゃ楽なんだが…クソッ
古代ドラグーン時代やダルア皇国時代にはそういう技術も存在したらしい、またハーサント連邦でも一部そういう医療が生まれているという話を聞いたことがあったが、ここクオパティ法制院は魔法偏重主義がはびこった文化圏である。確かに魔法による医療は近隣諸国で最も進んでいたが、人体の構造に対する理解や機械化された医療が遅れていた。
アンダーソンはクオパティの癒し手としてほぼ名人の域に達していた。「癒し殺しのアンダーソン」とは彼の僧侶呪文の技の冴えに次々負傷者が全快し、文字通り死ぬまで戦えることから隊員に揶揄された言葉である。
しかし彼は僧侶の技を極めれば極めるほど魔法の力だけでは癒しきれない傷や病があることに気が付いてもいた。我が国の魔法医療はもはや限界にきている、そう感じたアンダーソンは法制院の魔法学会では毛嫌いされがちなハーサント連邦の合理実践主義的な医学の知識を、人目を忍んで学んでいた。
「ク、クオパティの御業を以て彼の者の傷を癒せ…癒…」
ハンナが新しく運び込まれた血まみれの戦士の傷を魔法で治療しようとしているのを見て、アンダーソンは彼女の手をとり、魔法の詠唱を中断させた。
「ハンナ、今は戦闘中じゃない。無駄に回復魔法を使うな、創部の状態を確かめてから局所に使え。出血箇所を検索して、止血してから回復魔法だ。処置するのは重大な傷からだ。必要のない回復魔法は極力控えろ。お前の魔力は隊の命綱だ、必要最低限の魔力で最大の効果を出せ。」
ノームの新人僧侶はきょとんとしているようだった。無理もないとアンダーソンは思う。
信仰心の高さ、魔法の力でのみ傷の回復を行い、傷つき倒れた人すべての傷を余すことなく癒せと教わる純粋なクオパティの僧侶には、アンダーソンのような僧侶兵の考えはすぐにはなじまないはずだ。しかもハンナはクオパティ法制院の治癒学科を5週間前に出たばかりの新人である。学校で習った理論と戦場のやり方の矛盾に即対応できるわけがない。
―だが、ここで覚えてもらわねばならん。俺だけでは今のこの隊を支えきれん。
「検索するのは、口、鼻、耳からだ。見た目の傷の派手さに惑わされずに生命を脅かす傷から対処しろ。傷は必ず視認してから、見えない傷は触診で深さを判断するんだ。」
「は…はい、わかりました。」
ふるえた声で答えた新人僧侶が恐る恐る戦士の胸に触れた。その途端戦士が大きくうめいた。
「あ…ぁ…痛かったですか?ごめんなさいっ」
「莫迦野郎、撫でるように触って何がわかるんだ、ただ痛がらせてどうする。」
こうやるんだよといってアンダーソンが両手でハの字を作って無造作に戦士の胸を包み込むとぐっと押し込んだ。
「ぎゃあああ!」
たまらず戦士が叫ぶ。
「ほら、これで肋骨が折れてるのがわかっただろ。さあ、肺に突き刺さらないように注意して傷を治してやれ。」
アンダーソンがそういったとき、聖堂の外にいた見張りのポークルの野伏せが飛び込んできた。
「アンダーソン、ちょっと来てくれ。」
「どうした、ギゾック。再襲撃か?」
処置をしておけよとハンナに指示を出して、アンダーソンが聖堂の外に出た。
「西門の地下の方角から変な音が聞こえるんだ。」
ポークルのレンジャー、ギゾック・シニ・ウィキンはアンダーソンと最も付き合いの古い兵士だった。正式なクオパティ法制聖騎士団の一員ではないが、アンダーソンとともに数多くの戦場に赴いた信頼できる男だ。彼の特技は斥候や偵察であり、ポークルの中でも並はずれた視覚や聴覚は隊にとっても大きな武器だった。先刻の夜襲も彼が察知し、アンダーソンが戦術で防衛したようなものだった。
ギゾックは耳を地面につけると、慎重に何かを探る様に意識を集中させた。アンダーソンも黙ってその様子を伺う。
聖堂の中から、また何かをひっくり返すような音が聞こえた。
「ハンナ!!静かにしろ!!」
アンダーソンが振り返ってそう叫んだ。その後しばらく様子を伺っていたギゾックが緊張した面持ちで顔をあげた。
「軽い…たくさんの藁半紙をこすり合わせるような音だ…一直線にこっちに向かってくる…大勢の…いや大量の足の音…」
そこまで言って言葉を切ると、二人は顔を見合わせた。アンダーソンが聖堂の扉に体当たりをして扉ごと勢いよく中に飛び込むと大声で叫んだ。
「排水口から離れろ!!早く!!」
「はい?」
間の悪いことにバケツ一杯にたまった患者の血膿を、ハンナが排水口に流し込もうとしている最中だった。
―アヴル・シット!
アンダーソンは自らの体に不可視の聖なる障壁を纏うと排水口に覆いかぶさった。その数瞬後に排水口から平べったい手のひらほどの黄金色の蟲が顔を出す。
「え?」
まだ状況がよく呑み込めていないハンナの足元にうずくまるアンダーソンの腹の下で、突如爆発が起こった。
「爆弾蟲だ!」
遅れて聖堂に入ってきたギゾックの声も連続して起こるくぐもった爆発音にかき消された。爆弾蟲はぞくぞくと排水口から顔をだし、アンダーソンの体の下で連鎖的に爆発を続けた。
「ぐうううう・・・・うう」
魔法の障壁で爆発の威力を相殺し続けるアンダーソンだったが、すさまじい連鎖爆発に魔法の鎧がもう永く持たない事を悟っていた。
どぅん!
ついに身にまとっていた魔法の障壁が打ち破られ、減殺されたとはいえアンダーソンの体に直接衝撃が届いた。たまらず上半身を跳ね上げたアンダーソンの腹の下から数匹の爆弾蟲が飛び出し、聖堂の中で爆裂した。たちまち聖堂の中は爆煙と爆発音で阿鼻叫喚に包まれた。
「きゃあああああ!」
最後の爆弾蟲が這い出て来て、身動きの取れない戦士たちの寝ているベッドに突進した。アンダーソンは必至でその蟲に飛びつくと両腕で地面に押さえつけた。
「タッチダウンはさせないぜ、ゴキブリ野郎。」
アンダーソンの両手が真っ白な爆炎に包まれた。
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この回は
まさにダミーの専門分野って感じかなwダミーにしか書けないって感じがして、ドキドキしながら読みすすめたよ・・・w
最初の戦いからちょっと離れた静かな雰囲気だけど、ハンナやギゾックみたいな個性的なキャラクターが出てきてあきさせない展開が面白いね!って選らそうに批評してみました・・・w
それにしてもギゾックってw
なんか初めて身近に感じるキャラクターが出てきたような・・・。
壮絶な戦死を期待しつつ、またまた続きがすごく楽しみで仕方ないです!
最初の戦いからちょっと離れた静かな雰囲気だけど、ハンナやギゾックみたいな個性的なキャラクターが出てきてあきさせない展開が面白いね!って選らそうに批評してみました・・・w
それにしてもギゾックってw
なんか初めて身近に感じるキャラクターが出てきたような・・・。
壮絶な戦死を期待しつつ、またまた続きがすごく楽しみで仕方ないです!
無題
たまさん>たまちゃんからの要望があったのでギゾックはできるだけ華々しく、そして華麗に散らせてあげようと思いますw書き直さなきゃw
matildaさん>プリだからって、ファイターの引き立て役じゃないのよ!って話と、wizardryだからって洞窟の中だけで戦うんじゃないのよ!って話を書きたいと思っていたら、こうなりましたwアンダーソンさんは42歳、バツイチの人間の男性です。
matildaさん>プリだからって、ファイターの引き立て役じゃないのよ!って話と、wizardryだからって洞窟の中だけで戦うんじゃないのよ!って話を書きたいと思っていたら、こうなりましたwアンダーソンさんは42歳、バツイチの人間の男性です。
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HN:
ダミ
性別:
非公開
職業:
なんか一生懸命押したり書いたりする仕事
趣味:
ゲーム・縄跳び
自己紹介:
弱い。ひたすら弱い。とにかく弱い
あるときは宝箱の中から爆弾を出すシーフ、またあるときは攻撃の届かないファイター。
ただ皆様の平和と健康と幸福を祈るだけの存在
E-mail:
wizardry_online31jp@yahoo.co.jp
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— (堕ω美) (@superstreetwiz) 2015, 12月 7