このブログは、wizon wizardryonline (ウィザードリィオンライン)のプレイ風景をつづったものです
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推敲のほうが書くこと自体より時間かかるのね
(前回までのあらすじ)
【盗賊】第一回はこちら
次回【盗賊】はこちら
世界wvvwのバンダム級横綱に挑戦した襟裳螺鈿(えりもらでん)が目にしたのは、第23代横綱ホセ・メンドクサーが減量に失敗してがりっがりに痩せてリングインする姿だった。
永遠のライバルの万全でない姿に悩む螺鈿だったが、ゴングが鳴ると心を鬼にしてホセの痩せ衰えた体に130kgの巨体から繰り出される殺人パンチを容赦なく叩き込む。
しかし、気力と根性だけで倒れないホセ。螺鈿はその姿に昨日見たゾンビ映画を重ね合わせて恐怖し、必勝を期すため、グローブにメリケンサックを仕込むことを決意する。
試合はお昼ご飯とお昼寝をはさみ後半戦へ・・・・今日のメニューは筑前煮だ。
(前回までのあらすじ)
【盗賊】第一回はこちら
次回【盗賊】はこちら
世界wvvwのバンダム級横綱に挑戦した襟裳螺鈿(えりもらでん)が目にしたのは、第23代横綱ホセ・メンドクサーが減量に失敗してがりっがりに痩せてリングインする姿だった。
永遠のライバルの万全でない姿に悩む螺鈿だったが、ゴングが鳴ると心を鬼にしてホセの痩せ衰えた体に130kgの巨体から繰り出される殺人パンチを容赦なく叩き込む。
しかし、気力と根性だけで倒れないホセ。螺鈿はその姿に昨日見たゾンビ映画を重ね合わせて恐怖し、必勝を期すため、グローブにメリケンサックを仕込むことを決意する。
試合はお昼ご飯とお昼寝をはさみ後半戦へ・・・・今日のメニューは筑前煮だ。
―!?
頬にはぜた焚き木の火で、サラは目を覚ました。うっすらと目を開けると、目の前にはよく見る個人用キャンプセットを使った焚火が炊いてある。
―不意の事態に遭遇した時はまず、状況を判断せよ―との盗賊ギルドのマスター教官の教えが刷り込まれていたサラは、唐突な目覚めに戸惑うことなく、自分がどういう状況にいるのかの把握に努めた。
焚火、見覚えのあるダンジョンの石畳、何かを煮るにおい。寝かされている、さっきのフロアか?あれ、さっき何があったんだっけ。腕が動かない、後ろ手に縛られている?
―そうだ、私はさっき、仲間とダンジョンを探索していて戦闘で・・・―
後頭部に鈍痛、さっきの打撲?装備は・・・着ているものはそのままだが、武器はない。盗られたか?いやなぜころさなかったの?そうだ、あいつは・・・どこだ。
「目が覚めたか。」
「!?」
自分の足元から聞こえてきたその声にサラは背筋が凍るほど驚いた。覚醒してからほんの数秒、身じろぎすらせず、寝息も擬態していたというのにその声の主には目が覚めたのを気づかれたらしい。観念して首を回して声のしたほうを見ると先ほどサラの隊を壊滅させたポークルの盗賊が、サラの所持品を無遠慮に物色しているようだった。いやサラだけではない。彼女の仲間達のものとみられる荷物も置かれている。サラを気絶させた後回収してきたのだろうか。そしてその傍らにはサラが愛用している手斧も無造作に転がされている。
「ポーションに、キャンプ、仕掛け罠に開錠セット、あとは測量ツールに携帯食か。大したものは持ってないな」
「・・・・・」
赤眼の盗賊の言うことを聞きながらサラは内心少しだけほっとした。どうやらサラの持つ秘密のポーチには気が付いていないらしい。魔法の力で隠匿されて所持者以外には見えない小さなポーチの中にはサラが持つ持ち物の中で最も強力な武器である魔力の込められた短刀と予備の仕掛け罠、それと高価な回復用ポーションと解毒用のポーションが入っている。サラ達三人の稼ぎのほぼ半年分を払って購入した魔法のポーチだったが、ひと財産かけたかいはあったようだ。ポーションはともかく、もし武器を使うことができたなら奇襲で逆転できるかもしれない。だがいずれにせよ両手を後ろに縛られて転がされているこの状況ではその目も絶望的であるように思われた。
「お前たち、どうやってこの迷宮にやってきた。誰から聞いたんだ」
ひとしきりサラのバッグを物色するのに飽きたのか、赤眼の盗賊は焚火のそばに座りなおすと、軽食にするために温めていたのであろう携帯用の小なべの中身に粉を足して火にかけながら、サラにそう問いかけた。
落ち着いてよくみれば彼はにぎやかな性格のポークルであることを訝しむほど無感情な雰囲気の男だ。年はサラより上だろうか?外見上の年齢はほぼ一生変わらないポークルは同種族間でも年が判別しにくいが、それでもその老成した空気は若くはないと思えたし、先ほどの戦闘で見せた紗枝の数々も一朝一夕でものにできるものではないはずだ。おそらくは盗賊のマスタークラスか・・・考えたくないが、今まで見た中で最も腕の立つ盗賊かもしれなかった。
「・・・なによ。それが聞きたくて私を殺さなかったわけ?ずいぶんお暇な殺人者さんね」
努めて冷静に受け答えをしようとしたサラだったが、どうしても言葉に険がこもってしまった。もともと戦士のアルフレッド以上に激昂しやすい性格をみんなの手前抑え込んでいたのが、サラである。目の前で長年苦楽を共にした仲間を惨殺されたのだ、さらにまな板に乗った魚よろしく生殺与奪の権利が相手にあるこの状況では、捨て鉢気味になるのも仕方がなかった。
「・・・・・」
盗賊は答えるつもりのないサラをしばらく眺めていたが、おもむろに立ち上がると、短刀を抜いてサラの背後に移動した。
―ごめんね、アル、パック。私もすぐあなたたちのもとに行きそうよ―
しかし、首筋に振り下ろされるかと思ったあの無慈悲な刃はサラを後ろ手に縛りあげた縄を切断しただけだった。
「!?」
「どうだ。見たところここまでくるための地図のようなものは持っていないな。どうやってこの場所を知ったんだ。」
なるほど、アルフレッドが破り捨てたあのインチキ地図が所持品になかったせいで、この盗賊はサラ達がどうやってここまでたどり着いたのかといぶかしんでいるわけだ。もしかしたら仲間がいるかもしれない、そう考えているのかもしれなかった。それを問いただすためにサラを殺さなかったというわけか。しかしなぜ急に戒めを解いたのか。サラの両手が自由になったからと言って自分の脅威足りえないと判断したためだろうか。もしそうだとしたら、悔しいがその通りだ。
「たまたまよ・・・森を通っていたら公式地図に載ってないダンジョンの入口がみつかったから、街に帰る前によっていこうって事になったのよ。」
さりげなく周囲を見回しながらサラはそういった。ここはまださっきの死闘が行われたフロアのようだった。視界の端に闇天使の死体がちらりと見えた。とっさにここで死んだアルフレッドのことが脳裏をよぎったが彼の死体は片付けられたのだろうか、近くにはないようだった。
「あんたみたいなのがいるって知ってたら入らなかったわよ。この場所だって偶然見つけたんだし」
嘘をつく意味はないと思ったが、本当のことを言った瞬間殺されるかもしれないと思うと自然と経緯をごまかしてしまっていた。
「嘘だな。」
盗賊はつまらなそうに言った。その態度に腹が立ったサラは駆け引きも忘れて一気にまくしたてた。
「ええ、殿、その通りでございます。嘘よ、でもだからなに?クソッタレの殺人者様になんで私がご丁寧に教えてやんなきゃいけないわけ?話し相手がほしいなら下水管の中でハイドビートルでも探したらどう?用が済んだらさっさと殺しなさいよ、この卑怯者の、ゴミ漁り!呪われろ、盗賊め!」
顔を真っ赤にして立ち上がり、冒険者の中でよく使われる罵倒の言葉をわめき散らしたサラを横目で見ながら、盗賊は薪にする小枝を折っただけだった。
「・・・座れ。お前の鼻息でキャンプの火が消えそうだ。盗賊になる前は啖呵専門の吟遊詩人だったのか?よくしゃべるやつだな」
「くそ・・・アルを・・・パックを殺しやがって・・・」
肩で息をするサラの目じりに不意に涙が浮かんだ。感情が爆発したせいで仲間を殺された悔しさがこみ上げてきたのだ。本当は今すぐ秘密のポーチの中の短剣を抜いて切りかかってやりたい、だがそうしたところで勝算は0だった。この男と自分の戦闘力には差がありすぎる、一太刀も切り込めないまま自分は殺されるだろう、仲間のように。だがもし何らかの方法でこの場を生き延びたなら、仲間の亡骸を街まで連れていき復活の儀式を執り行うことができる、その可能性がわずかでも残されていると思い至ってギリギリのところでサラは攻撃を思いとどまった。
―こいつは私を今すぐ殺さない。手慰みか、気まぐれか、ともかく私をなめている。だから拘束を外してこうやってのうのうと会話してるんだ。この隙をどうにかしてつければ―
感情の針が振り切れたのか、サラの脳裏に急速に盗賊としての冷静な判断力が戻ってきた。と同時にマスターから盗賊の修行の初めに受けた訓示も思い出された。
「サラ、俺たちの仕事で一番重要なのはな、状況を作ることだ。敵は常に強大だ。強さを競うな。立ち向かわず、回避しろ。耐えるな、受け流せ。こじ開けるな、向こうから開けさせろ。勝つな、勝たせろ。そうやって状況を作ることだけ考えるんだ。」
「じゃあそのあとは、どうするんですか?」と若いサラは教官に問うたものだ。
「そのあと?きまってる。幸運を!」
やたら歯並びのいい教官だったななどとサラが思い出しつつたき火を挟んで男の向かい側に座ると、再度この赤眼の盗賊を観察することにした。どうにかしてこいつを出し抜ける状況を―突破口を開かなくてはいけない。
―チャンスは一度だ。こいつがこのなめた態度でいられるうちに一度の隙をつく方法を考えなくてはいけない、でもどうやって?―
「・・・・・・」
「・・・仲間が大切か?」
じっと黙りこんで睨みつけるサラに男が問いかけた。
「ふんっ・・・・」
サラはその問いに侮辱するように鼻を鳴らしただけだった。
冒険地を巡り、危険な罠やモンスターと対決する冒険者家業を続ける動機は様々だ。金のため、名誉のため、スリルを求めて、誰も手に入れたことのない希少品を入手するため・・・だがそれはすべて若い時の動機である。
試しに誰でもいい、ベテランの冒険者と呼ばれるものを捕まえてこう聞いてみればいい「冒険者になって手に入れた最高の宝はなんだ」と。彼らは有名なマジックアイテムの名を挙げるかもしれない、世界に一つしかない品の名を誇らしげに語るかもしれない。だがそう問われて本当に彼らの胸の底に去来するのは、長年冒険を共にし、危険を潜り抜けた自らの仲間達の名前なのだ。それは赤の他人に語るのも憚られる、冒険者として生きてみなければ理解できない想いだ。
「そうじゃない冒険者なんているのかしら。」
そしてその仲間の命を奪ったのは目の前のこの盗賊なのだ。答える気にもならない質問だった。
「俺もだ。俺にも仲間がいた。」
意外な言葉だったが、サラの脳裏に先ほど息絶えていたポークルの女戦士の姿が浮かんだ。
「だからなによ。一緒に冒険した仲間でしょ?消失したわけじゃないなら街まで死体を連れて帰ってやればいいじゃない。見たところ潜入者専門の追いはぎみたいだけど、こんなレアなダンジョンにずっと一人でいたって獲物も少ないんじゃないかしら。さっさとお仲間連れて地上に出ていけば?」
「・・・・・」
男はサラの問いを無視するようにしばらく小なべの中身をかき混ぜていたが、ぽつりと言った。
「話してやろう、このダンジョンの事を。」
頬にはぜた焚き木の火で、サラは目を覚ました。うっすらと目を開けると、目の前にはよく見る個人用キャンプセットを使った焚火が炊いてある。
―不意の事態に遭遇した時はまず、状況を判断せよ―との盗賊ギルドのマスター教官の教えが刷り込まれていたサラは、唐突な目覚めに戸惑うことなく、自分がどういう状況にいるのかの把握に努めた。
焚火、見覚えのあるダンジョンの石畳、何かを煮るにおい。寝かされている、さっきのフロアか?あれ、さっき何があったんだっけ。腕が動かない、後ろ手に縛られている?
―そうだ、私はさっき、仲間とダンジョンを探索していて戦闘で・・・―
後頭部に鈍痛、さっきの打撲?装備は・・・着ているものはそのままだが、武器はない。盗られたか?いやなぜころさなかったの?そうだ、あいつは・・・どこだ。
「目が覚めたか。」
「!?」
自分の足元から聞こえてきたその声にサラは背筋が凍るほど驚いた。覚醒してからほんの数秒、身じろぎすらせず、寝息も擬態していたというのにその声の主には目が覚めたのを気づかれたらしい。観念して首を回して声のしたほうを見ると先ほどサラの隊を壊滅させたポークルの盗賊が、サラの所持品を無遠慮に物色しているようだった。いやサラだけではない。彼女の仲間達のものとみられる荷物も置かれている。サラを気絶させた後回収してきたのだろうか。そしてその傍らにはサラが愛用している手斧も無造作に転がされている。
「ポーションに、キャンプ、仕掛け罠に開錠セット、あとは測量ツールに携帯食か。大したものは持ってないな」
「・・・・・」
赤眼の盗賊の言うことを聞きながらサラは内心少しだけほっとした。どうやらサラの持つ秘密のポーチには気が付いていないらしい。魔法の力で隠匿されて所持者以外には見えない小さなポーチの中にはサラが持つ持ち物の中で最も強力な武器である魔力の込められた短刀と予備の仕掛け罠、それと高価な回復用ポーションと解毒用のポーションが入っている。サラ達三人の稼ぎのほぼ半年分を払って購入した魔法のポーチだったが、ひと財産かけたかいはあったようだ。ポーションはともかく、もし武器を使うことができたなら奇襲で逆転できるかもしれない。だがいずれにせよ両手を後ろに縛られて転がされているこの状況ではその目も絶望的であるように思われた。
「お前たち、どうやってこの迷宮にやってきた。誰から聞いたんだ」
ひとしきりサラのバッグを物色するのに飽きたのか、赤眼の盗賊は焚火のそばに座りなおすと、軽食にするために温めていたのであろう携帯用の小なべの中身に粉を足して火にかけながら、サラにそう問いかけた。
落ち着いてよくみれば彼はにぎやかな性格のポークルであることを訝しむほど無感情な雰囲気の男だ。年はサラより上だろうか?外見上の年齢はほぼ一生変わらないポークルは同種族間でも年が判別しにくいが、それでもその老成した空気は若くはないと思えたし、先ほどの戦闘で見せた紗枝の数々も一朝一夕でものにできるものではないはずだ。おそらくは盗賊のマスタークラスか・・・考えたくないが、今まで見た中で最も腕の立つ盗賊かもしれなかった。
「・・・なによ。それが聞きたくて私を殺さなかったわけ?ずいぶんお暇な殺人者さんね」
努めて冷静に受け答えをしようとしたサラだったが、どうしても言葉に険がこもってしまった。もともと戦士のアルフレッド以上に激昂しやすい性格をみんなの手前抑え込んでいたのが、サラである。目の前で長年苦楽を共にした仲間を惨殺されたのだ、さらにまな板に乗った魚よろしく生殺与奪の権利が相手にあるこの状況では、捨て鉢気味になるのも仕方がなかった。
「・・・・・」
盗賊は答えるつもりのないサラをしばらく眺めていたが、おもむろに立ち上がると、短刀を抜いてサラの背後に移動した。
―ごめんね、アル、パック。私もすぐあなたたちのもとに行きそうよ―
しかし、首筋に振り下ろされるかと思ったあの無慈悲な刃はサラを後ろ手に縛りあげた縄を切断しただけだった。
「!?」
「どうだ。見たところここまでくるための地図のようなものは持っていないな。どうやってこの場所を知ったんだ。」
なるほど、アルフレッドが破り捨てたあのインチキ地図が所持品になかったせいで、この盗賊はサラ達がどうやってここまでたどり着いたのかといぶかしんでいるわけだ。もしかしたら仲間がいるかもしれない、そう考えているのかもしれなかった。それを問いただすためにサラを殺さなかったというわけか。しかしなぜ急に戒めを解いたのか。サラの両手が自由になったからと言って自分の脅威足りえないと判断したためだろうか。もしそうだとしたら、悔しいがその通りだ。
「たまたまよ・・・森を通っていたら公式地図に載ってないダンジョンの入口がみつかったから、街に帰る前によっていこうって事になったのよ。」
さりげなく周囲を見回しながらサラはそういった。ここはまださっきの死闘が行われたフロアのようだった。視界の端に闇天使の死体がちらりと見えた。とっさにここで死んだアルフレッドのことが脳裏をよぎったが彼の死体は片付けられたのだろうか、近くにはないようだった。
「あんたみたいなのがいるって知ってたら入らなかったわよ。この場所だって偶然見つけたんだし」
嘘をつく意味はないと思ったが、本当のことを言った瞬間殺されるかもしれないと思うと自然と経緯をごまかしてしまっていた。
「嘘だな。」
盗賊はつまらなそうに言った。その態度に腹が立ったサラは駆け引きも忘れて一気にまくしたてた。
「ええ、殿、その通りでございます。嘘よ、でもだからなに?クソッタレの殺人者様になんで私がご丁寧に教えてやんなきゃいけないわけ?話し相手がほしいなら下水管の中でハイドビートルでも探したらどう?用が済んだらさっさと殺しなさいよ、この卑怯者の、ゴミ漁り!呪われろ、盗賊め!」
顔を真っ赤にして立ち上がり、冒険者の中でよく使われる罵倒の言葉をわめき散らしたサラを横目で見ながら、盗賊は薪にする小枝を折っただけだった。
「・・・座れ。お前の鼻息でキャンプの火が消えそうだ。盗賊になる前は啖呵専門の吟遊詩人だったのか?よくしゃべるやつだな」
「くそ・・・アルを・・・パックを殺しやがって・・・」
肩で息をするサラの目じりに不意に涙が浮かんだ。感情が爆発したせいで仲間を殺された悔しさがこみ上げてきたのだ。本当は今すぐ秘密のポーチの中の短剣を抜いて切りかかってやりたい、だがそうしたところで勝算は0だった。この男と自分の戦闘力には差がありすぎる、一太刀も切り込めないまま自分は殺されるだろう、仲間のように。だがもし何らかの方法でこの場を生き延びたなら、仲間の亡骸を街まで連れていき復活の儀式を執り行うことができる、その可能性がわずかでも残されていると思い至ってギリギリのところでサラは攻撃を思いとどまった。
―こいつは私を今すぐ殺さない。手慰みか、気まぐれか、ともかく私をなめている。だから拘束を外してこうやってのうのうと会話してるんだ。この隙をどうにかしてつければ―
感情の針が振り切れたのか、サラの脳裏に急速に盗賊としての冷静な判断力が戻ってきた。と同時にマスターから盗賊の修行の初めに受けた訓示も思い出された。
「サラ、俺たちの仕事で一番重要なのはな、状況を作ることだ。敵は常に強大だ。強さを競うな。立ち向かわず、回避しろ。耐えるな、受け流せ。こじ開けるな、向こうから開けさせろ。勝つな、勝たせろ。そうやって状況を作ることだけ考えるんだ。」
「じゃあそのあとは、どうするんですか?」と若いサラは教官に問うたものだ。
「そのあと?きまってる。幸運を!」
やたら歯並びのいい教官だったななどとサラが思い出しつつたき火を挟んで男の向かい側に座ると、再度この赤眼の盗賊を観察することにした。どうにかしてこいつを出し抜ける状況を―突破口を開かなくてはいけない。
―チャンスは一度だ。こいつがこのなめた態度でいられるうちに一度の隙をつく方法を考えなくてはいけない、でもどうやって?―
「・・・・・・」
「・・・仲間が大切か?」
じっと黙りこんで睨みつけるサラに男が問いかけた。
「ふんっ・・・・」
サラはその問いに侮辱するように鼻を鳴らしただけだった。
冒険地を巡り、危険な罠やモンスターと対決する冒険者家業を続ける動機は様々だ。金のため、名誉のため、スリルを求めて、誰も手に入れたことのない希少品を入手するため・・・だがそれはすべて若い時の動機である。
試しに誰でもいい、ベテランの冒険者と呼ばれるものを捕まえてこう聞いてみればいい「冒険者になって手に入れた最高の宝はなんだ」と。彼らは有名なマジックアイテムの名を挙げるかもしれない、世界に一つしかない品の名を誇らしげに語るかもしれない。だがそう問われて本当に彼らの胸の底に去来するのは、長年冒険を共にし、危険を潜り抜けた自らの仲間達の名前なのだ。それは赤の他人に語るのも憚られる、冒険者として生きてみなければ理解できない想いだ。
「そうじゃない冒険者なんているのかしら。」
そしてその仲間の命を奪ったのは目の前のこの盗賊なのだ。答える気にもならない質問だった。
「俺もだ。俺にも仲間がいた。」
意外な言葉だったが、サラの脳裏に先ほど息絶えていたポークルの女戦士の姿が浮かんだ。
「だからなによ。一緒に冒険した仲間でしょ?消失したわけじゃないなら街まで死体を連れて帰ってやればいいじゃない。見たところ潜入者専門の追いはぎみたいだけど、こんなレアなダンジョンにずっと一人でいたって獲物も少ないんじゃないかしら。さっさとお仲間連れて地上に出ていけば?」
「・・・・・」
男はサラの問いを無視するようにしばらく小なべの中身をかき混ぜていたが、ぽつりと言った。
「話してやろう、このダンジョンの事を。」
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なんか一生懸命押したり書いたりする仕事
趣味:
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弱い。ひたすら弱い。とにかく弱い
あるときは宝箱の中から爆弾を出すシーフ、またあるときは攻撃の届かないファイター。
ただ皆様の平和と健康と幸福を祈るだけの存在
E-mail:
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プレイヤーで作る『ファッション重視』のイベントについての質問です。
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— (堕ω美) (@superstreetwiz) 2015, 12月 7