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前回【戦士】⑤-3
次回【戦士】⑥-2
*訂正やなんにゃかんにゃご指摘いただいてありがとうございます。
なんでじぶんでみたときはわからないんだろうなー
これでも何回かは見てるはずなのに*
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クオパティ法制院。この地上におけるもっとも強力な宗教国家の首府、「大聖堂」は大陸に大きくまたがるケロン山脈の中腹をくりぬいて建設された。要塞堅固な大聖堂は古来よりあらゆる外敵からクオパティ教皇とその信徒を守り、多くのクオパティ聖位階にある聖職者達がこの場所に集い、クオパティの信仰にまつわるほぼすべての中央祭儀が行われている。まさにクオパティ信徒にとって総本山といっていい場所である。
その大聖堂の中枢部、クオパティ教皇のおわす枢機院と呼ばれる区画の廊下をとても聖職者には見えない恰好の男がのし歩いていた。クオパティの聖紋を法衣の上に付けているものの、その下の肉体はたくましく発達し、僧侶というよりは戦士といった風格だ。実際彼は非暴力、平和主義を基幹とするするクオパティの聖職者でありながら、武装したクオパティの戦士を率いて、クオパティ教皇と法制院に仇名す邪教外敵を武力宗教弾圧することをその信仰の道に選んだ、僧兵と呼ばれる僧侶の1人だった。
「落ち着け、ハンナ。あまりきょろきょろするな。」
よくみれば、彼の後ろから終始おどおどした様子の若いノームの女僧侶が付き従っている。
「あっはい。アンダーソン司祭、大丈夫です。きょろきょろしてません。」
ハンナと呼ばれた若いノームの女僧侶はひきつった笑顔でそう答えた。しかし言葉と裏腹に、どう見ても初めて訪れたクオパティの聖地に浮き足立って挙動不審になっている様子だ。さっきから何も障害物のない廊下ですでに3~4回は僧衣の裾を踏んでスっ転びそうになっていた。そばを通り過ぎるクオパティの高位聖職者たちは怪訝な顔でこの珍妙な二人の僧侶を見ている。
僧兵の男、僧侶アンダーソンは極力周りに聞こえないようにして、ハンナに忠告した。
「俺達僧兵はただでさえここじゃあ肩身が狭いんだ。これ以上変人の集まりだなんて噂を立てられてはかなわんぞ。僧侶らしく堂々としろ。」
表向き平和主義を掲げるクオパティ僧侶の世界において、異教徒相手とはいえ専ら暴力を生業とする彼ら僧兵に対する評価は複雑なものだ。「必要なら槌を振るえ」とクオパティの聖典に言葉があるが、必要であるかどうかにかかわらず、振るわれた槌に血がついていたら、当然その槌を振るったものは忌み嫌われるのだ。
「はいっ堂々としますっ」
そういって急に胸を張ったノームの僧侶を見て、アンダーソンは久々にアヴルールに本気で祈りそうになった。ああ、大いなるアヴルールは何故われの進む道に七難八苦を与えしや。いと高き神の御心は計り知れぬもの也。
「アンダーソン、アルバート=アンダーソン。」
ハンナの言動に頭を抱えそうになったとき、後ろから唐突に呼び止められた。アンダーソンがびくりと体をこわばらせて振り向くと、そこには彼の見知った顔があった。
「これは…エマディム助司教様。」
僧兵の男は畏まり、片膝をかがめて略礼を示す。ハンナもあわててそれにならった。
「なに、見知らぬ仲ではあるまい。昔のようにエマと呼んでくれても構わんぞ。」
アンダーソンを呼び止めたのはエルフの女だった。しかし一見して異様な女である。祝福済みであることを示す聖印の付いた真っ赤なプレートアーマーに身を包んでおり、僧兵、聖戦士であろうとも武装の禁止されているこの枢機院内で剣まで帯びている。僧兵であるアンダーソン達以上にこの場にふさわしくない装いだ。そばに2人、部下らしき同じ装備に身を包んだ戦士を侍らせていた。
「AA、久しぶりだな。こんなところで何をしている。外辺境の邪教徒どもを殺しきって帰ってきたのか?」
彼女は畏まるアンダーソンを不遜な態度で見下ろすと、肉食獣のように笑った。そうして彼女の最も異様な点は、その顔だった。右の口の端から大きくめくれ上がるように裂傷が縦に走っており、笑うと傷跡から奥の歯が歯茎ごとむき出しになって見えた。異相、狂相の類といっていい。
「外辺境に住まう法皇聖下の御威光にまつろわぬ邪教徒の数は、浜の真砂の如きもの、アヴルールならぬこの身にそのようなことが出来ましょうや……先だっての遠征の報告に枢機院までまかり越した次第でございます。」
「なるほど、ご苦労だな。しかしお前の言うとおりだ。お互いバカども相手の仕事はいつまでたっても気苦労が絶えん。あいつらの数はいくら殺しても……ん?」
エマディムと呼ばれたそのエルフは、そこで初めてハンナに気が付いたようだった。
「なんだこの小動物は、お前の飼い始めた新しい修道娼婦か?」
エマディムはネコ科の肉食獣が獲物を狙うような視線をハンナに送った。ノームの女僧侶はパクパクと金魚のように口を動かしながら何か答えようとしたが、あまりの迫力に全く言葉が口をついてでない。
「……お戯れを。これは新しく私の隊に赴任してきた僧侶です。ほら、ハンナ、助司教様にご挨拶をしろ。」
「ハ、ハンナ=ヨハンナ。じゅ、19歳です。あの、今月付けで、だ、第六十二戦術中隊に配属されました。どうぞ、お見知りおきください」
アンダーソンがハンナの幼稚な挨拶を聞いて、額の間にケロン山脈の様な深い縦皺を作って苦悶した。
「は、はは。かわいいねえ。そうか、新任の僧侶さんか。アンダーソンの鍛え方は激しかろう。うぶなうちにたっぷりと可愛がってもらいなさい。」
エマディムはおもむろに顔を近づけると、なめまわすようにハンナを眺め、じゅるり、と歯茎の間から唾を啜った。
「!?」
「おおっと。すまないね。このご面相のせいで、よだれが垂れてかなわん。」
むき出しになった歯間からよだれを啜りながらそういう。
「……いまだ御治療なさいませんか。法制院には腕のいい再生療術師も居りましょうに。」
「いやなに。この顔も仕事の上では役に立つものでね。やくざな稼業には強面も便利がいい。」
「助司教様、そろそろ。グリフォーン隊の出発時間が過ぎてしまいます。」
そばに控える戦士の1人が、魔力時計を見せながらエマディムに声をかけた。
「ん、そうか名残惜しいな。アンダーソン、また会おう。次も生きて会えるといいな。」
「今から御出立ですか。ご武運を。」
「ご武運?」
異相のエルフの女戦士は歩き去ろうとして、もう一度アンダーソン達を振り返った。
「そんなものは必要ないね。忘れたのかい?アタシの仕事は、ただの「祝福」だよ。」
言うだけ言うと、女はマントを翻し、三人の戦士は歩き去って行った。
「今のは、エマディム助司祭だ。クオパティ枢機院の警察機構、聖罰騎士団の戦士だ。」
聖罰騎士団の話はハンナも聞いたことがあった。法皇直下の懲罰機関で、枢機院内の治安と現実法の維持を受け持つ。アンダーソンやハンナら僧兵が法制院の外敵に対する武力だとしたら、彼らは法制院内の人間に対する武力と定義することができるであろう。
だが、ハンナが聞きたいのはそういう事ではなかった。
「……」
「そ、その。俺がまだ新兵訓練所の教官だったころ、彼女を練兵した。エマ……エマディムは聖士官学校出の幹部候補生だったんだ。今は俺より上級の聖職階位につかれているが……」
「………」
ハンナの目つきがますます細まり、射抜くようにアンダーソンを見ている。こいつ、普段はすっトロイくせになんて目つきをするんだ。アンダーソンは何か言いたげなハンナの視線に咳払いをひとつすると、口を開いた。
「俺の……別れた女房だ。」
*次回 【戦士】⑥-2は こちら*
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あるときは宝箱の中から爆弾を出すシーフ、またあるときは攻撃の届かないファイター。
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プレイヤーで作る『ファッション重視』のイベントについての質問です。
審査員などによるコーデを採点する方式のイベントと、採点を行わないショー的要素が強いイベントどっちを見てみたい?参加してみたい?
— (堕ω美) (@superstreetwiz) 2015, 12月 7