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これまでの小説まとめ
妄想小説【戦士】前回
妄想小説【戦士】次回
「くっ……殺せ。」
いやーよくもまあ。こんなドット絵を見て
ボンッキュッボーーーンのビキニアーマー女戦士を想像できたもんだなあ。
人間の想像力ってすげえ!
というわけで妄想小説【戦士】②です。
前回の投稿で文字の大きさが狂ってました。すいません。今回から字体を変えてみましたがどうでしょう。
「ヴィントってのはあんたかい。」
鍛冶屋通りには冒険者が集う酒場がいくつもある。有名なギルガメッシュの酒場の姉妹店から、冒険者の旅籠を兼ねたもの、月ごとに名前も入口も魔術師の主人の気まぐれで変わる喫茶店まで、ざっと百を超す「冒険者の酒場」と「冒険者の宿」がひしめき合っている。
その中の一つ『マッコイ兄弟団』と看板のかかった小さな酒場の奥で独りで黙々と碁に興じている髭の男に、斜めに被った金色の毛皮の縁取りの付いた豪奢な帽子から端正な顔を覗かせたエルフの男はそう尋ねた。目にも鮮やかな青い布地の上着を着た彼の胸には銀の鎖につながれた薔薇のブローチが光っている。
「……俺の事だ。」
碁打ち男は、相手を見もせずにそういった。
「つれない態度だな、ヴィントさんよ。あんたが出した「冒険隊募集」を見てわざわざやってきたんだぜ。」
「俺が探しているのは落ちぶれた奇術師じゃない。本物の戦士だ。」
次の瞬間、碁打ち男が打とうとしていた黒い石をエルフの投げた投擲用の短剣が見事に断ち割った。貝殻で出来ていた碁石を真っ二つして碁盤に刺さった短剣が、突き立った衝撃で振動する刃の音を店中に響かせる。カウンターの奥ではジト目で若いノームの女将がこちらを見ているが、エルフの剣士はきっぱりと無視した。「冒険者の酒場」で荒事は日常茶飯事だ、こんなものは毎夜『ギルガメッシュの酒場』で行われている荒くれた冒険者の間では挨拶にも入らない。
「俺が優秀な戦士だってことをあんたの体にわからせてやってもいいんだが、あんたは俺の雇い主になる予定だ。面接で金を払えない体になったら俺も困る……俺の名はラマルク、よろしくな。」
そう大仰な態度でのたまうと、ヴィントの正面の席にどっかりと腰を下ろす。ラマルクは自身も冒険者だった父によく言い聞かされた。「初対面で相手の鼻先にパンチを叩き込め」
「きざな奴だ……お前が今くだらない自己主張のついでにナイフを突き立てたのはマクガット地方でしか採れないハマグリで作った碁石だ。しかもダルア皇国時代の職人の手による品だぞ。ディメントじゃ手に入れるのも一苦労だ。これでお前が募集要項を満たしてなかったら首の骨をへし折って店の看板の下に吊るすから覚悟しておけ。」
「へえ、道理で。スカしたデザインの碁石だと思ったぜ。だがおっさん、できもしないことを言うと後で恥かくぜ。」
ラマルクは大仰に肩をすくめると、テーブルの上に足を投げ出し、碁盤から短剣を引き抜いて爪の垢をほじ繰り返し始めた。
「それで、マクガットの言葉がわかるか?」
「もちろん。生まれてから親父と一緒に19までマクガットで暮らした。『六月革命』が起こる三か月前にディメントに来た。」
「『六月革命』?あれはな、若造。ただの反逆だ。」
「どっちでもいいさ、あの年の六月にヨーレイナロウ王が殺されて、国が様変わりした。ただの親子旅行だったはずなのに、家も市民台帳も焼けて、俺達親子は国に帰ることができなくなった。あんなことにならなきゃあ今頃は故郷で栄えある王城戦士として仕官してたさ。」
エルフの剣士は肩をすくめて、そういった。
「ふん、王城戦士か。剣の腕は確かだろうな、最低でも達人階位はなければ困る。」
「デクサーの冒険団でもうかれこれ1年半前に達人階位に上がった……なあ、俺の仕事は質問に答えるだけか?あんた腕の立つ戦士を探してるんだろ?」
この港町『灯台の街』はディメント王国が厚く領民に冒険者家業を推奨することで有名な都市だった。各国、各都市を跨ぐ超国家機関である冒険者ギルドの支部も、なぜか街の大きさに不釣り合いにあるものは大きい。通常冒険者家業を支えるのは、「国家の保護」、「冒険者ギルド」、それに冒険者となる人の武技や知識を支える各種「職業ギルド」と呼ばれる三つの勢力だ。そのどれもが、この小さな街では充実していた。一説によればイルファーロの魔法局の駐在局長が、冒険者を使った一大傭兵市場を築きたいがため、王府に進言して特に国内の冒険者の保護と奨励に努めたらしい。まあ、意図がどうあれ、当の冒険者たちにとっては次々に新しい冒険地を指定され、そこで冒険を許可してもらえるのならもろ手を挙げて賛成するだけの話である。
ラマルクはその冒険者の銀座『灯台の街』では名の通った古株の冒険団『デクサーズ・カフェ』で最年少で戦士の達人階位、マスターと呼ばれるレベルに達していた。数年に及ぶ迷宮での修行の日々はつらかったが、晴れてラマルクも一人前の戦士の称号を得たわけだ。
「莫迦いえ、俺がお前に見せられたのは曲芸師のナイフ投げと、講談師の軽口だけだ。さっきのが剣の腕前だと思っているなら、フンドシ担ぎからやり直せ」
「・・・・・・」
ヴィントの憎まれ口を聞きながら、帽子を脱いでこりこりと頭を掻いていいたラマルクが、一瞬で弾けたように抜剣し、座ったままヴィントの目の前に切っ先を突きつけた。
「碁打ち爺さん。俺たちはあんまり初対面の印象が良くなかったな、お互い気に食わない、そこはお互い反省しようじゃないか。でもこれ以上俺の戦士としての実力を侮辱する気なら、あんたは戦士じゃなくて今後僧侶が必要になるぜ。」
「落ち着け、若造。俺が不安なのは、お前の軽率な性格だ。それに……」
ヴィントの言葉が続く。
「戦士が実力を誇示するためにいちいち剣を抜くな。むやみに太刀筋を披露すればいらん癖を読まれるぞ。」
ラマルクがヴィントの言葉の意味を頭で理解する前に、エルフの戦士は恐ろしい事実に気が付いた。いつのまにか左の腰帯あたりに、テーブルの下からヴィントの抜き身の剣が押し付けられていたのだ。
「……剣を振るった後に左半身に隙ができる。確かに抜き打ちは大したものだが、初撃で仕留められなかったときはどうする。剣で長く生きたいなら、打ちこんだ後の残心を忘れるな。」
どっと生ぬるい汗がラマルクの全身を伝った。このヴィントという男はやすやすと自分の死角を盗んだ。しかも剣癖まで見抜かれている。純粋な剣の実力だけならば、ラマルクより上かもしれなかった。ぞわりとラマルクの中で本物の殺意が鎌首をもたげた。
「……まあいい。マクガットの言葉がわかる戦士なら実力がどうあれ雇うつもりだった。脅しに剣を突きつけあうのは戦士の流儀じゃない、切るつもりのない剣を腰のその立派な鞘に戻せ」
「ちっ……」
エルフの戦士はしぶしぶ剣を収めて、ふてくされたように再びテーブルに足を投げ出した。
(300万も払うなんて話聞いてなきゃ、椅子を蹴倒して帰ってるところだ。)
そう内心毒づいて、ラマルクは冒険者ギルドにかけられていた、この仕事の壁貼り広告の事をおもいだしていた。「募集 戦士 達人階位以上 報酬金100万 追加報酬200万 以下詳細…」冒険隊募集の用紙が何十枚もひしめき合っているコルクボードの一角に、その募集はひっそりと貼られていた。
金300万とはただ事ではない。並の農夫なら一家丸ごと一生食うに困らない金額である。冒険者にしても破格の報酬だ。だが冒険者ギルドの受付職員の話だと半年前から募集が出ているが、誰もその募集条件に合致しないのだという。訝しんで募集用紙をよく見てみたら、最後の一文にこう添えられていた「*最重要* マクガット国生まれ、もしくはマクガット国人と同様程度にマクガット国語を話し、読み書きができる者、マクガット国の地理に詳しいもの。」
マクガットはここ、アザルス大陸のディメント王国下港町、『灯台の街』とは真反対にある大陸の端だ。マクガット国人がこの国にいないこともないだろうが、それで冒険者家業についているものでなおかつ腕の立つ戦士となると確かに探し出すのも困難だろう。しかし、その一文を見た瞬間、ラマルクはにんまり笑った。彼は生粋のマクガット国生まれのエルフで、もちろん国の言葉には堪能だったからだ。最近新しい迷宮を発掘するディメント王国冒険者ギルドの下部組織「先遺隊」が仕事をおざなりにしているとのうわさがあり、巷の冒険者は「ダンジョン日照り」にあえいでいた。つまるところ、新しい迷宮がみつからないまま、今見つかっている迷宮をほぼほりつくしていた状態で、ダンジョンに潜ろうとも大した稼ぎも出なくなり、冒険者たちは食うにも事欠きはじめていたわけである。
(こんなめんどくさそうな奴が冒険隊長じゃなかったら、最高だったんだがな。)
「……気に食わないのは俺も同じだ。俺たちは初対面の印象がよくない、そこはお互い反省しようじゃないか。」
ヴィントが先ほどのラマルクの言葉を嫌味になぞる。出会いがしらの「鼻先にパンチ」されたのはラマルクの方だ。
「わかった、わかった!アンタがボスだ、それでいい。」
意地の張り合いも莫迦らしくなったラマルクがもろ手を挙げてそういった。あまり物事にこだわるような性格ではないのだ、それにどうせ食い詰め気味のラマルクにはこの仕事を受けるしかない。
「……冒険者ギルド発行の冒険者許可証と戦士ギルドの転職証、レベル認定状は持ってきたか?」
だまってラマルクが一般的な冒険者であれば常に携帯しているだろうそれらの証明書をテーブルの上に置いた。
「火にくべろ。」
「なんて言った?」
「そこの火鉢にくべるんだ。この仕事にそれらはいらない。むしろ持っていたら厄介なことになる。安心しろ、仕事が終われば全部再発行してやる。なんならレベルを上げた許可証を発行してやってもいい。間違いなく「大冒険」になるはずだからな。嫌でもレベルアップするさ。」
「……あんた、俺に何をやらせようっていうんだ?」
自身を証明するもろもろの書類を破棄しろと言われたことで、逆にラマルクはこの仕事とヴィントに興味が出てきた。親父と同じ道を歩み始めたのも、危険や冒険を求めて止まない性向があったからだと言ってもよい。冒険者はラマルクの天職だった。なにものにも縛られず、不可解な依頼をうけ未知の冒険地へ達成困難な任務に向かう。幾晩も冒険者の酒場で語り継がれるような伝説のモンスターと戦い、玲瓏の姫君を試練の末救い出す。そういったものが、いわば冒険そのものが、彼を冒険の道へと駆り立てる真の報酬だ。
エルフの戦士は、身を乗り出し、うす暗い店内の中をぼんやりと照らす、テーブルに備え付けられた魔光ランプの灯に浮かび上がったヴィントの顔をまじまじと眺めた。赤茶けた髭に覆われているが顔つきは険峻で、目には強い意志を感じる、さきほどラマルクが肝をつぶしかけた剣の腕をとってみても相当な戦士であることは間違いなさそうだ。大胆だが油断がない。そんな男が持ちかける身分を証明するものを捨てねばならない任務。ラマルクはヴィントといがみ合っていたこともすっかり忘れて、彼の提示する「仕事」がどんなものであるか、好奇心を抑えきれなくなっていた。
「ふ……ふふ。冒険者の顔だな、この国の奴らはみんなそんな顔をしている。」
ラマルクの様子を見てとって、ヴィントも口の端を持ちあげた。この国の冒険者という職業の男女はみんな鼻持ちならないが、一つだけ気持ちのいいことがある。未知の冒険、未踏の探検、そういった状況にまるで子供が初めて見る山や海に心をときめかすような表情をするのだ。
「若造、お前、お姫様を守る騎士になる気はあるか?」
ラマルクはその言葉を聞いて、機嫌よく笑い、手元の身分証を勢いよく火鉢の中に放り込んだ。
*妄想小説【戦士】次回*
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プレイヤーで作る『ファッション重視』のイベントについての質問です。
審査員などによるコーデを採点する方式のイベントと、採点を行わないショー的要素が強いイベントどっちを見てみたい?参加してみたい?
— (堕ω美) (@superstreetwiz) 2015, 12月 7