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このブログは、wizon wizardryonline (ウィザードリィオンライン)のプレイ風景をつづったものです JP現アルバロア鯖で活動しているプレイヤーの個人日記です。
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これまでの小説まとめ
 
前回【戦士】①前編は こちら 

次回【戦士】②は こちら
     
       
 ブログの文字数制限というものに初めて引っかかりました。よって「【戦士】①」はへんなところで途中ぶった切って前篇後編になってしまった。なんたるウカツ!!

忍者ブログ、しっかりしてくれ!ニンニン。


* 次回戦士②へのリンクが切れていましたので修正しました。*

拍手[2回]





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 うねりのない直線を駆けさせては『雷鳥』の脚に並みの馬ではついてこれない。あっという間に追っ手を振り切り、城下町の入口まで到着する。しかしはたして満身創痍になりながら城下町にたどり着いたガスが見たのは、略奪と放火で混乱を極めるマクガットの街だった。交易で豊かに栄えたマクガットの城下町は今、煉獄の阿鼻叫喚に包まれている。

 

(ここもか)

 

「ガス、ガス=ペーパードリック」

 

 そう呼ぶ声に聞き覚えがあって、彼は馬上から声のする方に首をめぐらせた。がっちりとした壮健な体を古めかしい鎧に窮屈そうに押し込めた、大槍を持った禿頭のドワーフが立っていた。元は灰色の髭が煤だらけになっている。家老の1人、グマー=グレイン卿である。傍らには緩やかな黒いローブをまとった、若いヒューマンの女性を控えさせていた、ひどく陰気な顔の中で目だけが油断なく爛々と光っていた。グレインの個人的な間諜、「シノビ」のようだ。

 

「グレイン殿!ご無事であったか!」

 

 旧知の人物と無事で再開し、君主を看取った坑道をはいでてから初めてガスの心中に安堵にも似た感情が沸き起こった。グレインの性格は四角四面のうるさ型だが、ガスの父の代から王に仕え、家老として王の手となり声となって国を盛り立ててきた男である。彼こそマクガットの陰の功労者だった。

 

「王は!?」

 

 グレインの短い問いに、ガスはただ苦しげに瞑目するしかなかった。

 

「身罷ら)れたか……」

 

「……本城が落ちる寸前に届いた伝令によれば、アイルスカイン公以下マクガット家御一党も東三の丸でことごとく討ち死になされたとの由。」

 

 城は焼け落ち、近衛戦士の長であるガスが単騎でここにいる。そのことからも当然王の身に起こったことは推察できてしかるべきだっただろうが、グレインは王の生死を直接聞かずにはおれなかった。最も国を愛し、国を作ってきた老ドワーフの一縷の望みが絶たれた。

 

「なんということだ。一夜にしてこの王国が潰えるとは……」

 

「グレイン殿、王の遺命を我が懐中にお預かり申しております」

 

 魂魄も砕けんばかりに落胆しようとする古老に、ガスは間髪入れずにそう告げた。その一言は同時にこの老ドワーフに、ガスが途轍もない密命を王から託されたのだということを直感させるに十分だった。老人の瞳に、再び火が灯る。

 

「アイゼッソン方面にビーロイの手勢がおる。焼け出された民を守りながら国境付近まで逃がしておるはずじゃ。アイゼッソンの港もまだ敵の手には落ちておらん」

 

「そうでしたか。火急の時なれば、このまま馬上にて失礼仕る。」

 

「まて。」

 

 一刻も早くこの場を離れようと、馬首を返したガスをグレインがひきとめた。

 

「……10年前、東方に殿が御幸された際、ディメント王の招きでかの国の『灯台の街』という港町に車を曲げられたことがあった。わしも御伴した。」

 

「・・・?」

 

「城下町の八つ目鰻通り、クラブ・バウルという旅籠じゃ。殿はそこに三月(みつき)ご逗留なされた。

 

(……!)

 

 グレインの言葉に、ガスの脳中で何かがひらめいた。老ドワーフは、ヨーレイナロウ王の(ゆかり)を伝えようとしているのだ。王家の秘中の秘、おそらく血統にかかわる秘密である。

 

「承った。」

 

 ガスはそう一言告げると、今度こそひときわ大きく鞭打って、『雷鳥』を一路アイゼッソンへと向わせた。

 

(……『灯台の街』、クラブ・バウル。)

 

 『雷鳥』の俊足が、たちまち燃え盛る城下町の風景が背のかなたに送ってゆく。城から上がり続けていた煙もいつしか稜線の向こうに見えなくなった。日が沈み、燃えるように空を照らしていた夕日の赤が、深く沈んだ月の蒼い光に染まる。

 山影ももはや夜の闇に塗りこめられて、暗い空にかすかに瞬く
北の星(ポラリス)だけが、彼の駆る馬の道しるべとなった常に天の端に瞬いて変わらぬ方位を指示し続ける星の光を見つめながら、仕える国と主君を奪われた近衛戦士は、がらんどうになってしまったはずの心の中に一本の宝剣が不思議な熱を持って脈打ち何かが組みあがっていくのを静かに感じていた。

 

この日、マクガットは落城し、王以下王位継承権を有した4人の王族が殺された。ヨーレイナロウ王とその一族は神から預かった国土を荒廃させ、王権を専横する「狂王」に至る疑いがある、というクオパティ法制院下位異端審査会が急きょ提出した真偽定かならぬ報告書を盾にとり、城を攻め立てたバイゼリー伯とヴェレイジオ公の連合軍は、しかし王権と王剣を手にすることができなかった。王威の証となる『輝宝の宝剣(ストーンソード)』がついに見つからなかったからである。

 この一帯の法的守護を務めるクオパティ法制院が定めた法典によれば、マクガットで王たるものはこの宝剣による儀式を持ってしか王位につけないとされている。「狂王」を討ったはいいが、空位になった玉座に付けず「大義」を完遂することはできなかった両貴族それぞれの派閥を率いてこれより長い間国を二分して泥沼の戦争状態に突入する

 

同じ日に一人の元王城戦士が、混乱に乗じて国境をこえ、はるか東のディメント王国に旅立った。彼は王の遺命代わりの懐中の剣を握りしめ、まだ見ぬ真の王がこの地に再び帰還し国を奪還することと、裏切り者にこの手で剣罰を与えんことをこの晩、アヴルールに血誓したのだった。

 

それが、今から6年前の出来事である。
  
  
  
次回【戦士】②は こちら

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