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前回【戦士】④-前編 はこちら
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*何度にも小分割して掲載することになってすいません。
これも非常に悪辣な忍者ブログの貧弱仕様のせいなので私を責めないでください。
でも責めるときは情け容赦なくお願いします。*
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ポークルの名前はポマレというらしかった。商売の世界では一匹オオカミの万屋で、金で扱えるものは「出生証明書から灰壺まで」なんでも扱うのが自慢だという。商売のネタを探していて『灯台の街』に転がる噂話を買い集めた結果、ガスたち「亡国の遺臣と姫君」の噂にたどり着いたそうだ。ガスは正直肝が冷える思いだった、確かに先日の戦闘で名乗りを上げたが、自分たちがこの街に潜伏してヨーレイナロウ王の縁を探し回っていたこと、それは数年にわたる調査だったので漏れても仕方がないとして、ナティルと接触したことがこれほど早く噂として街に広がっていたとは。
「甘いねえ。この世に金で買えない話なんざありゃしないんだよ。」
そうポークルはうそぶいたが確かにその通りなのかもしれなかった。そうとなれば、自分たちのこれからの行動は敵に筒抜けという可能性もある。ガスの持つ『輝宝の短剣』と王のおとし子ナティルがそろった以上、これからは迂闊に動くこともできまい。しかしそこは「蛇の道はジャイアントヴァイパー」、ともポマレは言った。
「情報を買い集められるってことは、偽の情報を売りつけることもできるって事さ。まあそれにも金がかかるがね。オイラはこう見えても金と噂のやりくりだけは『灯台の街』で一番だって自負してるんだ。お兄ちゃんとお姫様のために、手を貸してやってもいいぜ」
「白々しいぞ、その見返りに何がほしいんだ。」
自らが金にしか忠誠を誓わないと言っておきながら、のうのうとよく偽善ぶったことが言えたものである。ポマレは何らかの利算があってこの話を持ちかけて北に違いがなかった。
「*おおっと*あせんないで。まあ、オイラが欲しいのはたった一枚の羊皮紙。あんたの王様が書いた商売の許可証だ。もちろん第一の商人としていくつかの「専売権」付きの!どうだい?あんたの王様の国でオイラを使ってくれたら、国の財布にも大儲けさせてやれるぜ。」
ジロリと睨みつけるガスの視線にもたじろがず、ひょうひょうとポマレは大胆なことを言い放つ。
「未だありもしない国と王を担保に出させてにとんでもない約束を取り付ける気だな……俺たちが国を取り戻したら一気に商売を牛耳りたいっていうのか?」
「できないだろうね。」
「なんだって。」
「だから、お兄ちゃんには「今は」マクガットの国土を取り戻せやしないって言ってるんだ。」
ポマレが首を振る。
「お兄ちゃん、ちょっとは冷静に考えてみなよ。一体全体どうやって国なんか取り返すつもりなんだい。あんたらまともな兵士が何人いるんだ?いたとしたって戦争やるにゃ大金がいる。金使って、人が死んで。そんな無駄なことはおやめよ。だれも得になんかならないさ。」
「じゃあなぜ俺たちに協力を申し出た。貴様、わざわざ愚弄しにきたのならただでは帰さんぞ。」
ガスとて、この手の下賤の輩にマクガット再興という大義を理解できるとは思っていない。理解してもらうつもりもない。だが、彼にとっては、マクガット城が焼け落ちた日以来、真の王を『輝宝の宝剣』と共にマクガットに帰還させることは至上命題であり悲願なのだ。侮辱されるなら許すつもりはなかった。
「おいらはただ、いつも儲かる話に金をかけるだけさ。商売っていうのは損をしないのが大前提だからね。」
「言ってることが矛盾しているぞ。俺たちの陣営にそれほど勝算がないと思っていて、協力しようというのか。」
亡国の元近衛隊長と、幾人かの遺臣。マクガット国内外に協力者は散発的にいるが、王のおとし子と王位の証があっても、いって見ればそれらは「お家再興」という見たこともない料理の、いまだ素材に過ぎない。料理人と素材がそろっても、調理道具やレシピがなければ料理が完成しないのと同じだ。王都を奪還する軍勢もなければ、ろくな他国とのコネクションもない。せいぜいが前王とディメント王の旧交だけだが、それすらディメント王の「情」にすがるのが関の山である。それが、ガスたちの現状だった。
もちろんガスは信念を持ってマクガットの再興のために粉骨砕身してきた。これからもそのつもりだ。しかしその大願が実現できるかどうか、冷めた頭で考えれば考えるほどそれは無謀な、途方もない事業のように思えることもある。実際この5年何度この任務に失敗する悪夢をみて寝床を冷や汗で濡らして飛び起きたか知れない。今はやっとヨーレイナロウの「縁」を探し当てたものの、ナティルは女児で彼女自身が王位を継ぐことはできなかった。一進一退と言ったところだ。国が再興できるのか、否か。それはこの五年何度も自問自答してきた。答えはいつも濃霧の中だ。
「勝つのは難しいけど、負けないように手は打てる。剣で敵わなきゃ、「碁」で勝負するとかどう?」
ポマレのいう事はどこか謎かけのようである。
「謎かけか?なんのことだ……碁?国家の大事を碁に例えるのか。」
「将棋や碁に例えられないような戦いをするつもり?まずそんなで勝てると思ってるのかい。まあ、かちたきゃ、の話だけど。それに碁は古代から天文占星術、ひいては戦術の訓練として考案されたものなんだよ。」
こいつ、下手に言い返すと話をけむに巻かれたうえ、倍になって返される。ガスは心中で舌打ちした。ガスが隠し持つ宝剣の事までたどり着いたことといい、この物言いといい。目端が利く男には違いない。ポマレと言葉を交わすたびに、ガスの不安がといら立ちが拡大していくようである。しかしそれは、ポマレの言葉のどこかに真実の一端があるからでもある。
「……ちょっとまて、貴様マクガットの王権を欲しがるほかの陣営にも、同じようにカネとモノをおとして儲けようっていう魂胆じゃないだろうな。」
武器商人、武具商人、魔兵器商人、ありとあらゆる戦争を「商売の道具として」生業にする商人たちの、それは基本的なふるまい方だった。戦う両者に武器を売る、食料を売る、船を売る、金を貸し付ける。どっちが勝っても自分は「損なし」というわけだ。
「オイラはこれでも何年か前までバイズリー公と専ら取引してたんだ。」
「失せろ、話を聞く理由がなくなった。俺がバイズリーの息のかかったものと知って取引すると思ったのか。」
その名を聞いて、空気が凍るような殺気がガスから放たれた。仇敵、怨敵、朝敵。ヨーレイナロウ王を殺害し、国を奪った、国賊バイズリー。もっとも聞きたくなかった相手の名前の一つ。
「だから、ちょっと落ち着きなって。お兄さんの思ってる事の逆さ。オイラは「お兄さんの仲間の振りをした敵のスパイ」じゃなくて「敵の仲間の振りをした、お兄さんのスパイ」になろうって話なんだ。だいたいお兄さんをこれから騙そうってのに、お兄さんの敵との関係をバラしちゃったりするかい?」
そういう手かもしれぬ。「味方のスパイの振りをした敵のスパイ」マクガットの近衛にいたころ、間諜の訓練も多少は受けた。この世界で交わされるのは、冒険者間でのやり取りなどを軽く超えた、裏の裏の裏のそのまた裏をかきあうような虚実入り混じった情報の魔術師たちの攻防である。
「ぶっちゃけ、あの人とは商売のソリがあわなくてさあ。首根っこ掴まれて商売させられてるような状態じゃ息苦しいのさ。」
それはつまり、権力者と商家のイニシアチブの取り合いの話だった。ポマレはバイズリー伯にきゅうきゅうに抑え込まれた御用商人ではなく、自由商人としてナティルの陣営にチャンスを見出そうという魂胆なのだ。
「大した度胸と二枚舌だ、いっそのこと商人を止めて弁士にでも転職しろ。とにかくこれ以上姫と俺達に付きまとうと本当に切り捨てるぞ。」
「その姫様のことなんだけど……しかたないなあ、これを聞いたらお兄さんの気も変わるかも。とっておきの情報を教えてあげるよ。」
「失せろと言っただろ。」
「いやこれ最後だから、ね?これがもし嘘だったら、その時はオイラを斬るなり捌くなり好きにすればいいさ。でもほんとならオイラのこと信用して仲間にしてもらうよ?」
「っち。わかった、言ってみろ。」
ポマレはガスにしゃがむように指示した。耳打ちするつもりらしい。ポークルの体格はいいところ5~6歳の幼児だから、ヒューマンが耳打ちされようと思ったらしゃがむしかないのだ。しぶしぶガスはしゃがんだ。
「実はさ……」
ポマレの話を聞いて、ガスの表情が変わった。青ざめたといっても過言ではない。
「本当だろうな。」
「金貨と銀貨とアヴルールに誓っ・・・・・」
ポマーレが気取った仕草で宣誓しようとしたところを、襟首掴まれて持ちあげられた。
「もしお前が俺たちをだますつもりなら、お前の首「ちょんぱっ」て、塩漬けにしてバイズリーに送り付ける。覚えておけ。」
喉をしめられ吊り下げられながら、腹話術の人形のようにポークルの商人はかくんかくんとうなずく。ガスは舌打ちしてポマレを道に乱暴に投げ捨てると、一路隠れ家へと急いだ。
次回、【戦士】④-中後編へ続く。
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プレイヤーで作る『ファッション重視』のイベントについての質問です。
審査員などによるコーデを採点する方式のイベントと、採点を行わないショー的要素が強いイベントどっちを見てみたい?参加してみたい?
— (堕ω美) (@superstreetwiz) 2015, 12月 7