このブログは、wizon wizardryonline (ウィザードリィオンライン)のプレイ風景をつづったものです
JP現アルバロア鯖で活動しているプレイヤーの個人日記です。
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「なんてこった、見違えたぞ。」
魔法局の廊下でエドウィンは正装した友人を眺めて満足そうに頷いた。
「どこがだ。さっきから動くたびに脚絆が股に食い込んで、ちくちくしてしょうがない。それにこの胴衣…型綿を詰めすぎなんじゃないのか?ぱんぱんで胸が押しつぶされそうだ。うーつらいー。」
「文句をいうな。いくらなんでもいつものよれよれのシャツとベストでここに来るわけにはいかないだろう。もうすぐ呼び出しなんだ、ちゃんとしてろよ。」
苦い顔で上着の襟を少しでもゆるめようともがくロージーは、しかしなかなか様になっていた。ハーフエルフのひきこもり魔術師らしい薄い体をしていたロージーの体型に合わせて、その男性的なシルエットを際立たせるようにぎゅうぎゅうに綿の入った胴衣は、あらかじめエドウィンが用意させていたものだ。高い立て襟と窮屈な胴衣は動きにくい格好だが、生来の美貌も相まって相当な美丈夫に見える。
「ロズウィック・ログウィリアナ・ロナベルトロズマン殿。」
呼び出しを担当している番兵が錫杖で重々しく大理石の床を叩くと、ロージーの名前を読み上げた。いよいよ採用面接の時が来たのだ。もう推薦状は魔法局のお偉方に渡してある、あとはロージーが余計なことを言わなければ採用となる運びだった。
「だいっきらいだ。このディバ☆インネーム」
ロージーがぶつぶつ言いながら動く石像のようなヨタヨタした動きで部屋の中に入っていった。あとは首尾よく事が運ぶのを祈るばかりである。エドウィンは手持無沙汰になったので、なんとなく魔法局の中庭に移動して、その見事な回廊と空中庭園を眺めにいく。
しかし、魔法局に運よく局員の空席が出てよかった、とエドウィンは改めて思う。詳しくは知らないが研究員の1人が突然行方不明になったのだ。居なくなったのは、もともと素行のあまりよくない人物で、今回の突然の逐電に魔法局の彼の在籍していた部署の室長が解雇を決心したという。顔なじみの魔法局の局員たちの間では、彼は裏では盗掘屋か冒険者の真似ごとをしていたらしいと囁かれていた。
―また冒険者だ。だから言わんこっちゃない。あれはまともな男子の生業ではないのだ。
行方不明の彼には悪いが、エドウィンと彼のハーフエルフの友人にとっては願ってもないタイミングだった。ロージーはその才能さえ誰かの目に留まれば仕官や働き口に事欠かない魔術師であることは間違いなかったからだ。エドウィンは局員募集の話を聞いたとき、迷わず魔法局のお偉方に自分の推薦状を添えてロージーの口利きをした。どうあっても今回のチャンスを生かしてやりたかった。
ロージーの性格は破天荒で自堕落でも、魔術の才能と見識はオークの浅瀬学校のころから抜群だった。優秀な成績で学校を卒業して、当然魔法局の幹部候補生か、講師の道へでも進むのかと思ったが、一年先に卒業したエドウィンが王立騎士団に入団したのと同じころ、ふっつりと学校をやめて昔のように冒険者のまねごとに没頭していたのだ。
当時はエドウィンも自分の私生活が忙しいこともあってあまり連絡を取っていなかったが、あとでそのことを聞いてあきれ返ったものだ。ロージーは控えめに言っても恵まれた才能と人生を全力で棒に振る達人としか思えなかった。
―『アルグニッツ冒険隊』…まぁ確かに、楽しかったがな。
蛇ゴブリンの巣、チコル城址、旧ダリア皇道、魔術師カーラの拝殿…エドウィンとロージーが幼いころから『アルグニッツ冒険隊』と称して二人で巡ったディメント王国近郊の冒険地でのスリルと興奮は、確かにエドウィンにとっても忘れ難い青春の1ページだ。だが一生冒険者のような不逞の輩として生きることはできない。家格と才能に見合った職について良家のご息女を娶って家庭を守るのは、立派なディメント男児の人生なのだ。冒険はないが…責任と義務と禄高がある。
―それにしても遅いな。面接は形式的なもののはずなのに。
もう面接が終わっているのではないかと思って面接室の方に歩み始めたエドウィンの目の前で、突如面接室の立派な扉が爆風で内側から吹き飛んだ。
「くそっ!!ロージー大丈夫か!?」
狼狽する番兵を押しのけ、思わず抜剣して部屋に駆け込んだエドウィンが見たのは、ひっくり返った重厚なマホガニーのテーブルと、舞い散る紙片、腰を抜かしたり頭を抱えて床に這いつくばっている魔法局のお偉方と満面の笑みで立ち尽くすハーフエルフの青年だった。
「ほらごらんなさい!炎爆の呪文だって音と光を加減すればこんなに詠唱時間を短縮することができるのですよ!逆に…爆発の範囲を絞って音と光を盛大に出すこともできる。どうしてあなた方は100年前の教本通りにしか術式を教えないのです。」
「ロージー…お、お前一体何をしてくれたんだ…」
「ああ、エド!先生方と多少魔術的な討論になってね。議論が白熱して終わらないものだから、実戦で見せたが早かろうと思っていまぼくの技前をお見せしていたところなんだ。」
ロージーが火の粉の付いた髪先をパタパタと振りながら悪びれもせずそう解説した。
考えうる限り、最悪を超えた超悪の展開だった。エドウィンはヴァンパイアのような真っ青な顔で魔法局の試験官たちを助け起こすと、平身低頭友人の暴挙を詫びた。
「すいません…こ、こいつは少々変わったところがありますが、魔術の独創性と実践にはご覧の…通り類稀な才能がありまして…」
もはやエドウィン自身、自分が何を言っているのかわからない。太古の伝説の詐欺師『踊る皇后』マティルダですらこの状況を丸く治めるは不可能と思われた。
「は、ははははは…ロナベルト家のご子息は多分に世間の常識のとらわれない豪放磊落なご気質のようですな…」
試験官達も恐怖と怒りで引き攣る顔で無理やり笑顔を作っている。ロージーの家名に傷をつけまいと必死なのだ。
その様子を見て、ふんと鼻を鳴らすと、ロージーは言った。
「先生方、もう面接はこんなもので終わりでしょう?ぼくなんかに栄えある魔法局の局員席を汚す資格なぞありませんよね?おおっと、部屋中木端だらけだ…喘息の気もあるのでここら辺でおいとまさせていただいてもよろしゅうございますか?」
試験官達が猛烈にかくかく頷くのを確認すると、ロージーは満足そうに恭しい一礼をして、部屋を後にした。
「まて、ロージー」
あわてて廊下に飛び出したエドウィンにロージーは言った。
「あ、エド。後で軍神前広場で待ってるよ!鍛冶屋通りにものすごくうまい蜂蜜酒を出すカフェを見つけたんだ!必ず来るんだぞ。二時に!待ってるからな。」
ひらひら手を振りながら跳ねるような足取りで走り去る友人の魔術師を莫迦みたいに呆然と立ち尽くして見送った後、エドウィンは大声で叫ぶと魔法局の石壁に拳を打ちつけた。
「やー…ぼくの顔を見るなり『素晴らしい、さすがはご高名なロナベルト家のご子息ですな。気品と才覚がい出立ちからあふれ出ておいでだ…では入局の書類にサインをしていただきましょう。』とか言って試験が終わっちゃったもんだからね。」
むすっと黙り込むエドウィンを尻目に、ロージーはしゃべり続けた。
「こちらもご高名な魔法局の先生方にお会いできて光栄です、されば折しもこの浅学非才の身にご指導いただきたい魔術議題がございまして、よろしければそれを持って試課とされてはいかがでしょうって提案したんだよ。」
何のことはない。万事首尾よくいくはずだった形式だけの面接試験をこの男はややこしくして試験官にいらぬ議論を挑んだのだ。それもおそらくわざと破綻させるために。
「それであのとおりさ!彼らは魔術の知識はあるけど、魔術だって日々進歩しているんだ!古い術式や魔術学閥にとらわれてちゃだめだよ!君も見ただろう?あの驚いた顔、傑作だったな!」
愉快痛快とかいいながら蜂蜜酒をぐい飲みする友人を恨めしそうにエドウィンは睨みつけた。
「ふざけるなっ…誰が推挙したと思ってるんだ…お前のせいで俺の面目は丸つぶれ、騎士団での昇進にも影響が出たらどうしてくれるんだ。」
「いい機会じゃないか!そんな堅苦しい衛兵家業なんて願い下げてしまえよ。しばらく休みをとってまた一緒に冒険に行こう、アリア川の支流に新しいダンジョンが見つかったって話があって…」
「ロージー…」
「76年の『アルグニッツ冒険隊』の遠征で行ったよな、アリア川。古い分水嶺を覚えているか?あの先に旧水路に続く構造があるって言われてるんだ。」
「ロージー!」
エドウィンがカフェのテーブルに拳を打ちつけ、蜂蜜酒のグラスが横倒しになる。店内がざわめき、近くの席でおしゃべりに没頭していたノームの女学生達が眉をひそめる。
「もういい!もうたくさんだ!『アルグニッツ冒険隊』なんか学生の遊びだ!どうしてわからないんだ。ちゃんと大人になれよ!」
「なにおこってんだい。」
ロージーは目をしばたいて、きょとんとしている。
「今まで困ったやつだとしか思っていなかったが、お前は最悪だ。もう少し自分と自分の家族や友人に敬意を払え。いや、もう友人ですらない…」
そういってテーブルに乱暴に飲み賃を叩きつけてエドウィンは立ち上がった。
「おい、エドどこにいくんだ。次の安息日は空いてるんだろ?」
「もう終わりだ。もう…お前なんか知らん。『アルグニッツ冒険隊』は一人でやれ。」
「まさか…副隊長が隊長を見捨てて脱退するっていうのか?二人だけの冒険団なのに。」
エドウィンは頭をかきむしってかぶりをふると、ロージーを指差して何事かを吐き捨てようとして…そのまま黙って踵を返して店を出た。
「まてよ、まてったら。」
途中一度だけ振り返ると雑然とした鍛冶屋通りの向こうから、ロージーが所在無げにこちらを見ていた。その姿は20年前にアルグニッツ村で初めて会った時のようだった。心細そうで、おどおどしていて、それでも精一杯なにかに耐えて虚勢を張ったような表情だった。
―知るかっ。
大股で歩き去るエドウィンの背後で、どこかの子供が泣いている声が聞こえた気がした。
次回【魔術師】はこちら
「なんてこった、見違えたぞ。」
魔法局の廊下でエドウィンは正装した友人を眺めて満足そうに頷いた。
「どこがだ。さっきから動くたびに脚絆が股に食い込んで、ちくちくしてしょうがない。それにこの胴衣…型綿を詰めすぎなんじゃないのか?ぱんぱんで胸が押しつぶされそうだ。うーつらいー。」
「文句をいうな。いくらなんでもいつものよれよれのシャツとベストでここに来るわけにはいかないだろう。もうすぐ呼び出しなんだ、ちゃんとしてろよ。」
苦い顔で上着の襟を少しでもゆるめようともがくロージーは、しかしなかなか様になっていた。ハーフエルフのひきこもり魔術師らしい薄い体をしていたロージーの体型に合わせて、その男性的なシルエットを際立たせるようにぎゅうぎゅうに綿の入った胴衣は、あらかじめエドウィンが用意させていたものだ。高い立て襟と窮屈な胴衣は動きにくい格好だが、生来の美貌も相まって相当な美丈夫に見える。
「ロズウィック・ログウィリアナ・ロナベルトロズマン殿。」
呼び出しを担当している番兵が錫杖で重々しく大理石の床を叩くと、ロージーの名前を読み上げた。いよいよ採用面接の時が来たのだ。もう推薦状は魔法局のお偉方に渡してある、あとはロージーが余計なことを言わなければ採用となる運びだった。
「だいっきらいだ。このディバ☆インネーム」
ロージーがぶつぶつ言いながら動く石像のようなヨタヨタした動きで部屋の中に入っていった。あとは首尾よく事が運ぶのを祈るばかりである。エドウィンは手持無沙汰になったので、なんとなく魔法局の中庭に移動して、その見事な回廊と空中庭園を眺めにいく。
しかし、魔法局に運よく局員の空席が出てよかった、とエドウィンは改めて思う。詳しくは知らないが研究員の1人が突然行方不明になったのだ。居なくなったのは、もともと素行のあまりよくない人物で、今回の突然の逐電に魔法局の彼の在籍していた部署の室長が解雇を決心したという。顔なじみの魔法局の局員たちの間では、彼は裏では盗掘屋か冒険者の真似ごとをしていたらしいと囁かれていた。
―また冒険者だ。だから言わんこっちゃない。あれはまともな男子の生業ではないのだ。
行方不明の彼には悪いが、エドウィンと彼のハーフエルフの友人にとっては願ってもないタイミングだった。ロージーはその才能さえ誰かの目に留まれば仕官や働き口に事欠かない魔術師であることは間違いなかったからだ。エドウィンは局員募集の話を聞いたとき、迷わず魔法局のお偉方に自分の推薦状を添えてロージーの口利きをした。どうあっても今回のチャンスを生かしてやりたかった。
ロージーの性格は破天荒で自堕落でも、魔術の才能と見識はオークの浅瀬学校のころから抜群だった。優秀な成績で学校を卒業して、当然魔法局の幹部候補生か、講師の道へでも進むのかと思ったが、一年先に卒業したエドウィンが王立騎士団に入団したのと同じころ、ふっつりと学校をやめて昔のように冒険者のまねごとに没頭していたのだ。
当時はエドウィンも自分の私生活が忙しいこともあってあまり連絡を取っていなかったが、あとでそのことを聞いてあきれ返ったものだ。ロージーは控えめに言っても恵まれた才能と人生を全力で棒に振る達人としか思えなかった。
―『アルグニッツ冒険隊』…まぁ確かに、楽しかったがな。
蛇ゴブリンの巣、チコル城址、旧ダリア皇道、魔術師カーラの拝殿…エドウィンとロージーが幼いころから『アルグニッツ冒険隊』と称して二人で巡ったディメント王国近郊の冒険地でのスリルと興奮は、確かにエドウィンにとっても忘れ難い青春の1ページだ。だが一生冒険者のような不逞の輩として生きることはできない。家格と才能に見合った職について良家のご息女を娶って家庭を守るのは、立派なディメント男児の人生なのだ。冒険はないが…責任と義務と禄高がある。
―それにしても遅いな。面接は形式的なもののはずなのに。
もう面接が終わっているのではないかと思って面接室の方に歩み始めたエドウィンの目の前で、突如面接室の立派な扉が爆風で内側から吹き飛んだ。
「くそっ!!ロージー大丈夫か!?」
狼狽する番兵を押しのけ、思わず抜剣して部屋に駆け込んだエドウィンが見たのは、ひっくり返った重厚なマホガニーのテーブルと、舞い散る紙片、腰を抜かしたり頭を抱えて床に這いつくばっている魔法局のお偉方と満面の笑みで立ち尽くすハーフエルフの青年だった。
「ほらごらんなさい!炎爆の呪文だって音と光を加減すればこんなに詠唱時間を短縮することができるのですよ!逆に…爆発の範囲を絞って音と光を盛大に出すこともできる。どうしてあなた方は100年前の教本通りにしか術式を教えないのです。」
「ロージー…お、お前一体何をしてくれたんだ…」
「ああ、エド!先生方と多少魔術的な討論になってね。議論が白熱して終わらないものだから、実戦で見せたが早かろうと思っていまぼくの技前をお見せしていたところなんだ。」
ロージーが火の粉の付いた髪先をパタパタと振りながら悪びれもせずそう解説した。
考えうる限り、最悪を超えた超悪の展開だった。エドウィンはヴァンパイアのような真っ青な顔で魔法局の試験官たちを助け起こすと、平身低頭友人の暴挙を詫びた。
「すいません…こ、こいつは少々変わったところがありますが、魔術の独創性と実践にはご覧の…通り類稀な才能がありまして…」
もはやエドウィン自身、自分が何を言っているのかわからない。太古の伝説の詐欺師『踊る皇后』マティルダですらこの状況を丸く治めるは不可能と思われた。
「は、ははははは…ロナベルト家のご子息は多分に世間の常識のとらわれない豪放磊落なご気質のようですな…」
試験官達も恐怖と怒りで引き攣る顔で無理やり笑顔を作っている。ロージーの家名に傷をつけまいと必死なのだ。
その様子を見て、ふんと鼻を鳴らすと、ロージーは言った。
「先生方、もう面接はこんなもので終わりでしょう?ぼくなんかに栄えある魔法局の局員席を汚す資格なぞありませんよね?おおっと、部屋中木端だらけだ…喘息の気もあるのでここら辺でおいとまさせていただいてもよろしゅうございますか?」
試験官達が猛烈にかくかく頷くのを確認すると、ロージーは満足そうに恭しい一礼をして、部屋を後にした。
「まて、ロージー」
あわてて廊下に飛び出したエドウィンにロージーは言った。
「あ、エド。後で軍神前広場で待ってるよ!鍛冶屋通りにものすごくうまい蜂蜜酒を出すカフェを見つけたんだ!必ず来るんだぞ。二時に!待ってるからな。」
ひらひら手を振りながら跳ねるような足取りで走り去る友人の魔術師を莫迦みたいに呆然と立ち尽くして見送った後、エドウィンは大声で叫ぶと魔法局の石壁に拳を打ちつけた。
「やー…ぼくの顔を見るなり『素晴らしい、さすがはご高名なロナベルト家のご子息ですな。気品と才覚がい出立ちからあふれ出ておいでだ…では入局の書類にサインをしていただきましょう。』とか言って試験が終わっちゃったもんだからね。」
むすっと黙り込むエドウィンを尻目に、ロージーはしゃべり続けた。
「こちらもご高名な魔法局の先生方にお会いできて光栄です、されば折しもこの浅学非才の身にご指導いただきたい魔術議題がございまして、よろしければそれを持って試課とされてはいかがでしょうって提案したんだよ。」
何のことはない。万事首尾よくいくはずだった形式だけの面接試験をこの男はややこしくして試験官にいらぬ議論を挑んだのだ。それもおそらくわざと破綻させるために。
「それであのとおりさ!彼らは魔術の知識はあるけど、魔術だって日々進歩しているんだ!古い術式や魔術学閥にとらわれてちゃだめだよ!君も見ただろう?あの驚いた顔、傑作だったな!」
愉快痛快とかいいながら蜂蜜酒をぐい飲みする友人を恨めしそうにエドウィンは睨みつけた。
「ふざけるなっ…誰が推挙したと思ってるんだ…お前のせいで俺の面目は丸つぶれ、騎士団での昇進にも影響が出たらどうしてくれるんだ。」
「いい機会じゃないか!そんな堅苦しい衛兵家業なんて願い下げてしまえよ。しばらく休みをとってまた一緒に冒険に行こう、アリア川の支流に新しいダンジョンが見つかったって話があって…」
「ロージー…」
「76年の『アルグニッツ冒険隊』の遠征で行ったよな、アリア川。古い分水嶺を覚えているか?あの先に旧水路に続く構造があるって言われてるんだ。」
「ロージー!」
エドウィンがカフェのテーブルに拳を打ちつけ、蜂蜜酒のグラスが横倒しになる。店内がざわめき、近くの席でおしゃべりに没頭していたノームの女学生達が眉をひそめる。
「もういい!もうたくさんだ!『アルグニッツ冒険隊』なんか学生の遊びだ!どうしてわからないんだ。ちゃんと大人になれよ!」
「なにおこってんだい。」
ロージーは目をしばたいて、きょとんとしている。
「今まで困ったやつだとしか思っていなかったが、お前は最悪だ。もう少し自分と自分の家族や友人に敬意を払え。いや、もう友人ですらない…」
そういってテーブルに乱暴に飲み賃を叩きつけてエドウィンは立ち上がった。
「おい、エドどこにいくんだ。次の安息日は空いてるんだろ?」
「もう終わりだ。もう…お前なんか知らん。『アルグニッツ冒険隊』は一人でやれ。」
「まさか…副隊長が隊長を見捨てて脱退するっていうのか?二人だけの冒険団なのに。」
エドウィンは頭をかきむしってかぶりをふると、ロージーを指差して何事かを吐き捨てようとして…そのまま黙って踵を返して店を出た。
「まてよ、まてったら。」
途中一度だけ振り返ると雑然とした鍛冶屋通りの向こうから、ロージーが所在無げにこちらを見ていた。その姿は20年前にアルグニッツ村で初めて会った時のようだった。心細そうで、おどおどしていて、それでも精一杯なにかに耐えて虚勢を張ったような表情だった。
―知るかっ。
大股で歩き去るエドウィンの背後で、どこかの子供が泣いている声が聞こえた気がした。
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ダミ
性別:
非公開
職業:
なんか一生懸命押したり書いたりする仕事
趣味:
ゲーム・縄跳び
自己紹介:
弱い。ひたすら弱い。とにかく弱い
あるときは宝箱の中から爆弾を出すシーフ、またあるときは攻撃の届かないファイター。
ただ皆様の平和と健康と幸福を祈るだけの存在
E-mail:
wizardry_online31jp@yahoo.co.jp
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— (堕ω美) (@superstreetwiz) 2015, 12月 7